2025年、日本政府は不法滞在者の強制送還を目的として、補正予算に8300万円を計上しました。この費用の主な対象は、強制送還が決定しているトルコ国籍の不法滞在者1098人とされています。とりわけ、日本におけるトルコ国籍者の多くはクルド人であり、長年にわたり難民認定申請や仮放免措置のもとで生活しているケースが多いのが現状です。
本記事では、不法滞在者の強制送還費用の負担のあり方、不法滞在問題の根本解決策、そして今回の補正予算がクルド人問題の打開策となり得るのかについて詳しく考察していきます。
不法滞在者の強制送還費用は日本の公金ではなく、本人や雇用企業、出身国が負担すべきではないか?
今回の補正予算8300万円は、日本政府の公金から支出される形となります。しかし、不法滞在者の送還費用を日本の納税者が負担することに対し、疑問を抱く声も少なくありません。本来、このような費用は以下の関係者が負担するべきではないでしょうか?
(1) 本人負担の可能性
不法滞在者本人が送還費用を負担するのが最も公平な手段の一つです。しかし、多くの不法滞在者は経済的に困窮しており、送還費用を自力で支払うことが難しいという現実があります。とはいえ、最低限の負担を義務化することにより、「不法滞在すると自分で送還費用を負担しなければならない」という意識を持たせ、違法滞在の抑止力とすることも可能です。
(2) 雇用企業の責任
不法滞在者の多くは、日本国内の企業や個人事業主によって雇用されています。本来、企業は合法的な在留資格を持つ労働者のみを雇用すべきですが、人手不足やコスト削減のために違法労働者を採用するケースが後を絶ちません。そのため、雇用主に対して一定割合の送還費用を負担させる制度を設けることで、雇用者側の責任を強化し、不法就労の抑制にもつながる可能性があります。
(3) 出身国の負担義務化
不法滞在者の送還先である出身国が、一定の費用を負担するのも一つの選択肢です。特に、政府間の協定を結び、不法滞在者を受け入れる条件として送還費用の一部を負担させることで、日本の財政負担を軽減することが可能です。

不法滞在問題の根本解決には、ビザなし交流の停止や法の整備、入国管理の強化が必要
日本における不法滞在問題を根本的に解決するためには、一時的な強制送還だけではなく、以下のような包括的な対策が求められます。
(1) ビザなし交流の見直し
現在、日本は多くの国と「ビザなし渡航協定」を結んでいますが、この制度が不法滞在の一因となっていることは否めません。例えば、観光ビザで入国した後、そのまま帰国せずに不法滞在するケースが後を絶ちません。特に、不法滞在率が高い国とは、ビザなし渡航協定を見直し、厳格な審査を行うことが重要です。
(2) 入国管理の強化
不法滞在者の増加を防ぐためには、入国審査の厳格化も不可欠です。例えば、入国時に詳細な経済状況や滞在目的を確認し、リスクの高い入国者に対してはビザ発給を制限することが考えられます。また、生体認証技術の活用や、出入国記録のデジタル化を進めることで、不法滞在を未然に防ぐことができます。
(3) 法整備の強化
現在の入管法では、不法滞在者に対する罰則が緩いため、逃亡や不法就労が発生しやすい状況となっています。不法滞在者に対する厳罰化や、仮放免の制限を強化することで、不法滞在のリスクを高めることが必要です。また、雇用側に対する罰則を強化することで、違法就労の温床を減らすことも可能です。
8300万円が使われたとしても、不法滞在者の犯罪が少しでも減るなら良いのではないか?
不法滞在者の増加は、日本社会にさまざまな問題をもたらします。その中には、犯罪の増加や治安の悪化といった懸念も含まれます。実際に、近年では不法滞在者による違法就労、窃盗、暴力事件などの犯罪が報告されています。
(1) 治安の維持と犯罪防止
不法滞在者の中には、生活が困窮するあまり犯罪に手を染める者もいます。そのため、今回の補正予算を用いて強制送還を進めることは、結果的に日本国内の治安維持に貢献する可能性があります。たとえ8300万円の費用がかかったとしても、その結果として犯罪が減少し、安全な社会が維持されるのであれば、一定の効果があると言えるでしょう。
(2) 今後の予算削減につながる可能性
不法滞在者の強制送還を進めることで、長期的には不法滞在者の数が減少し、結果的に今後の送還費用を削減することができます。また、不法滞在者の存在によって発生する社会的コスト(違法就労、医療費負担、治安維持費など)を考慮すると、早期の強制送還はコスト削減にもつながる可能性があります。

まとめ:クルド人問題の打開策になるか?
今回の補正予算8300万円を活用した不法滞在者の強制送還は、一時的な対策として一定の効果が期待されます。しかし、クルド人問題の根本的な解決策としては不十分です。
日本におけるクルド人の多くは、難民認定が下りず、仮放免状態で生活しています。この問題を解決するためには、送還の実施だけでなく、以下のような長期的な対策が必要です。
- 不法滞在防止のための法整備強化
- 難民認定制度の見直しと適正化
- トルコ政府との協議による適切な対応策の模索
不法滞在問題を本質的に解決するためには、単なる強制送還だけではなく、日本の移民政策全体を見直すことが求められています。