タイの不法就労ブローカーの差し金か!?難民申請1万2千人のうち、タイが2128人で前年の11倍

外国人問題

令和6年に難民認定申請した外国人約1万2千人のうち、タイ国籍者が2128人に達し、前年の184人から約11倍に急増したことが、出入国在留管理庁のまとめで分かった。

国籍別ではスリランカに次ぐ2番目となる。背景には、これまで大量の外国人労働者を受け入れてきた韓国での不法就労者摘発の強化により、タイの不法就労ブローカーが新たなターゲットとして日本を狙っているという指摘がある。

難民申請急増の背景

タイは比較的安定した政治・経済を持つ国であり、本来であれば難民認定申請が急増する要因は少ない。しかしながら、短期滞在の査証(ビザ)が免除されており、パスポート一つで来日できることから、不法就労目的での入国が容易である。事実、昨年の難民申請者数の上位10カ国のうち、ビザ免除対象国はタイとトルコのみであり、ビザ免除の趣旨を逸脱した目的外利用が指摘されている。

タイからの難民申請者の中には、実際には迫害を受けたわけではなく、経済的な理由で日本に滞在しようとする者が多いと考えられる。タイは他のアジア諸国と比較しても失業率は低いが、国内の最低賃金が日本の水準に比べてはるかに低いため、出稼ぎ労働を求める人々が後を絶たない。こうした背景を利用して、タイの不法就労ブローカーが日本での就労を斡旋し、結果として難民申請の急増につながっている。

短期滞在の査証(ビザ)免除とは?

短期滞在の査証免除とは、特定の国のパスポートを持つ人が、一定期間、日本などの国に観光・ビジネス・親族訪問などの目的で入国する際に、ビザ(査証)の取得を免除される制度のことを指します。これは各国間の外交関係や相互協定に基づいて決定されます。

1. 短期滞在の査証免除の目的

査証免除制度は、国際的な交流の促進や観光客・ビジネス関係者の利便性向上を目的としています。例えば、日本は多くの国と査証免除の取り決めを結んでおり、該当する国のパスポートを持つ人は、日本に最長90日間まで査証なしで滞在できます。

2. 対象となる国・地域

日本が査証免除を認めている国・地域は数十か国以上にのぼりますが、対象国は時期や国際情勢により変わることがあります。例えば、アメリカ、カナダ、イギリス、EU加盟国、オーストラリア、韓国、台湾などが含まれます。ただし、これらの国の国民であっても、就労目的の入国には査証が必要です。

3. 短期滞在の目的と期間

査証免除での入国が許可される主な目的は次の通りです。

  • 観光(旅行や友人・親族訪問など)
  • ビジネス(商談、会議、視察、短期研修など)
  • 学術・文化交流(講演、会議参加など)

滞在可能な期間は多くの場合15日、30日、90日のいずれかです。ただし、滞在期間を超えて滞在する場合や、就労・長期留学などの目的がある場合は、適切な査証の取得が必要です。

4. 入国時の条件

査証免除で入国する場合でも、次の条件を満たす必要があります:

有効なパスポートを所持していること
帰国または第三国への航空券を所持していること(片道チケットのみでは入国拒否の可能性あり)
十分な滞在資金があること(入国審査で証明を求められる場合あり)
入国目的が適切であること(入国審査で疑われた場合、入国を拒否される可能性あり)

また、過去に日本でのオーバーステイ歴がある場合や、犯罪歴がある場合は、査証免除での入国が許可されない可能性があります。

5. 免除対象外の場合

次のような場合には、査証免除の対象外となり、事前にビザを取得する必要があります:

🚫 長期滞在を希望する場合(留学、就労、結婚、永住など)
🚫 就労目的での入国(特定の短期ビジネス活動を除く)
🚫 査証免除対象国でない国の国民である場合
🚫 過去に日本での入国拒否・強制退去歴がある場合

タイの不法就労ブローカーの関与

日本の入国管理制度の隙を突く形で、タイの不法就労ブローカーが活動を活発化させている。不法就労ブローカーはタイ国内で「日本で高収入の仕事がある」と宣伝し、渡航費やビザ手続きの代行を名目に高額な費用を徴収するケースが多い。また、来日後はアルバイトの斡旋や不法就労先の提供を行い、さらなる搾取を続ける。

また、日本国内にもこれに協力する業者が存在し、偽装難民申請の指南や雇用仲介を行っているとみられる。結果として、日本の難民認定制度が悪用され、本来の難民保護の目的が損なわれている。

この問題はタイだけにとどまらず、過去にはフィリピンやベトナムなどの国々でも類似の事例が報告されている。特に技能実習生制度を利用した労働者の不法滞在が問題視されており、一度日本に入国した後、難民申請を行うことで長期間の滞在を試みるケースが増えている。

日本の対応と課題

政府はこの問題に対し、不法就労対策の強化や難民申請の審査厳格化を進めている。しかしながら、ビザ免除制度が存続している限り、不法就労目的の入国者を完全に防ぐことは難しい。さらに、申請者が審査期間中に就労可能となる制度の見直しも求められている。

特に、G7諸国以外の国からのビザ免除措置に関しては、再検討の必要性がある。タイやトルコに加え、近年ではクルド人による不法滞在問題も取り沙汰されており、日本の移民政策全体の見直しが急務となっている。

韓国では不法就労者の取り締まりを強化する一方で、日本ではまだ十分な対策が取られていないのが現状だ。例えば、韓国は外国人労働者の受け入れ枠を厳格化し、不法滞在者に対する摘発を強化することで、不法就労者の流入を抑えている。一方、日本では難民申請中でも働くことができる制度があるため、この点を悪用されている可能性が高い。

また、欧州では偽装難民問題が深刻化しており、特にドイツやフランスでは厳格な審査が行われている。これらの国々の対応を参考にし、日本も難民申請制度の厳格化を進める必要がある。

筆者の考え

ビザ免除制度は、本来観光促進や国際交流のために設けられたものである。しかし、その趣旨を逸脱し、不法就労や難民申請の悪用につながっている現状を鑑みると、制度の見直しが不可欠である。

特にG7諸国以外の国については、ビザ免除措置を廃止し、正規のビザ申請を義務付けることで、不法就労や偽装難民の流入を防ぐべきである。また、偽装申請を支援する国内の業者に対する取締りを強化し、日本の入国管理制度を厳格化することが求められる。

さらに、日本の就労ビザ制度を見直し、本当に必要な労働者を適正なルートで受け入れる仕組みを構築することが重要だ。例えば、特定技能制度の拡充や、技能実習制度の適正化を進めることで、不法就労を未然に防ぐことができる。

今後、日本が国際的な人道的責務を果たしつつ、自国の治安と経済秩序を守るためには、入国管理のさらなる強化と制度の適正化が不可欠である。そのためには、政府だけでなく、企業や自治体、市民社会が一体となって取り組むことが求められる。


歯止めが利かない外国人・移民問題
「外国人問題」の記事一覧です。