はじめに
日本に在留する外国人の数は、2024年12月末の時点で376万9000人に達し、過去最多となりました。前年同時期と比べても35万8000人の増加が見られ、これは日本の社会・経済において外国人の存在感が高まっていることを示しています。
出入国在留管理庁のデータによると、この増加の背景には、技能実習生や特定技能といった制度を活用する労働者の増加、留学生の受け入れ拡大、高度外国人材の流入が関係しています。日本は少子高齢化の進行により労働力不足が深刻化しており、外国人労働者の受け入れが社会全体に与える影響も大きくなっています。
しかし、外国人を受け入れることにはメリットだけでなく、デメリットも存在します。本記事では、日本における外国人受け入れのメリット・デメリットを整理し、今後の課題について考察していきます。
外国人を受け入れるメリット
① 働き手不足の解消
日本の労働力人口は年々減少しています。特に建設、介護、農業、飲食業などの業界では深刻な人手不足が続いており、外国人労働者の受け入れが不可欠になっています。
例えば、技能実習制度や特定技能制度を活用し、アジア諸国からの労働者を受け入れることで、企業の人手不足を補うことが可能になります。これにより、サービスの質を維持し、経済の停滞を防ぐことができます。
② 高度人材の確保
日本では、AI・IT分野、バイオテクノロジー、金融などの分野で高度な専門知識を持つ人材が不足しています。
高度外国人材制度を利用することで、優秀なエンジニアや研究者を受け入れ、日本の技術革新や国際競争力の向上につなげることができます。また、外国人起業家の受け入れにより、国内市場の活性化も期待できます。
③ 税収の増加
外国人が日本で働き、収入を得ることで所得税や住民税が増加し、社会保障制度の支え手となります。
少子高齢化が進む日本では、税収の確保が重要な課題となっており、外国人労働者の増加は財政面でもプラスに働く可能性があります。
④ 国際化の推進
外国人の受け入れが進むことで、日本社会の多様性が増し、国際交流が活発化します。異文化理解が進み、観光や貿易にも良い影響を与えるでしょう。
また、外国人が増えることで、日本人の語学力向上にもつながり、グローバル社会での競争力を高めることができます。
⑤ 空き家・過疎地域の活用
地方では人口減少に伴う空き家の増加が深刻な問題になっています。外国人の定住者が増えることで、空き家の活用が進み、地域の活性化につながる可能性があります。

外国人を受け入れるデメリット
① 犯罪の増加
外国人の増加に伴い、一部では犯罪が増加しているという指摘があります。特に技能実習生の失踪問題や不法滞在者の増加は社会的な課題となっています。
警察庁のデータによると、外国人犯罪の割合は日本全体の犯罪件数に比べれば小さいものの、一部の不法滞在者による窃盗・詐欺・違法就労の問題が懸念されています。
② 治安の悪化
薬物の密売・使用、暴力団とのつながり、組織犯罪の増加など、外国人の増加に伴う治安の悪化も指摘されています。
また、文化の違いから地域住民とのトラブルが増え、騒音問題やマナー違反などが問題となるケースもあります。
③ 日本語の衰退と生活環境の変化
外国人労働者の増加により、日本語を話さない人々が増え、地域社会とのコミュニケーションが難しくなるケースもあります。
例えば、一部の地域では、英語や中国語、ベトナム語での案内が増え、日本語が使用される機会が減ることが懸念されています。また、外国人の多い地域では、学校や病院での対応が課題となっています。
④ 医療・福祉への負担増
外国人労働者が増えることで、医療機関や福祉制度への負担が増える可能性があります。特に、健康保険制度を悪用するケース(高額医療を受けた後に帰国するなど)も報告されています。
今後の課題
① 在留資格の取得基準を適正化
外国人を受け入れる際のルールを厳格化し、一定の条件を満たした人だけが滞在できる仕組みが必要です。
例えば、筆者がスペインに住んでいた頃は学生ビザの更新にあたり、銀行口座に6000ユーロ(約100万円)以上の預金が必要とされていました。今はもっと高額だと予想します。日本でも、生活費の確保や犯罪歴の確認を徹底することで、不法滞在者や違法労働者の増加を防ぐことができます。
② 日本語教育の強化
外国人労働者が日本で円滑に生活できるよう、日本語教育を強化することが重要です。企業や自治体が積極的に日本語研修を提供することで、言語の壁を低くすることができます。
③ 受け入れ地域のサポート体制強化
外国人が増える地域では、相談窓口の設置や多言語対応の拡充が求められます。特に、役所や病院、学校での対応強化が急務です。

おわりに
日本における在留外国人の増加は、労働力確保や国際化の推進といったメリットがある一方で、治安や言語問題といったデメリットも伴います。
今後、日本が持続可能な形で外国人を受け入れるためには、適切な在留資格の基準設定、日本語教育の充実、地域社会との共生が重要になります。
外国人との共存は日本社会にとって避けられない課題です。制度の見直しを進めながら、「日本に住みたい」と思える環境を整えつつ、日本社会の安全性と秩序を維持するバランスを取ることが求められます。
