外国人の外免切替が招く事故と制度の欠陥——運転免許審査の実態と対策

外国人問題

2025年5月、埼玉県三郷市で下校中の小学生4人をはねて逃走した中国籍ドライバーと、新名神高速を約14 km逆走して多重衝突を招いたペルー国籍ドライバーはいずれも外国免許切替(外免切替)で日本の免許を取得していた。

両事件は略式命令や不起訴で収束し、「こんなに簡単に免許が取れるのか」という世論の怒りが噴出した。事故報道を扱った在阪テレビ局の特集は再生数を伸ばし、外免切替への不信が一気に可視化された。
東海テレビ放送
関西テレビ放送 カンテレ

外免切替は1962年に発足した制度だが、2015年以降のビザ緩和と観光客増加が拍車を掛け、2024年の交付件数は7万5 905件と9年前の2倍超に達した。
FNNプライムオンライン 

大阪・門真試験場では予約開始3分で枠が完売し、SNSには「1万円で明日の枠を譲渡」といった投稿が並ぶ。制度の温床が事故報道を増幅し、安全神話は音を立てて崩れつつある。

外免切替とは何か

外免切替は道路交通法97条2項と施行規則40条の2に基づく簡易審査であり、所要時間は最短半日だ。必要書類は

①有効な外国免許
②日本語翻訳
③旅券
④3か月以上の当該国滞在歴
⑤国内住所の証明書


——の5点のみ。東京都警視庁の案内には**「都内に居住(一時滞在を含む)」**と明記され、ホテル・ゲストハウスの住所でも申請できる。
東京都警視庁東京都警視庁

知識確認は○×10問で7問正解、技能確認は場内コース1周が基本。全員通訳同伴可、再受験回数無制限ゆえ合格率は9割超とされる。新規免許取得で約30万円かかる国内教習と比べ、翻訳・手数料込みでも2万円前後で済むため、母国語のブログや動画では「日本免許の裏技」と紹介される始末だ。

国際比較を見れば日本の審査が異例であることは明白だ。英国はEEA免許保持者でも実技必須かつ居住180日以上、米カリフォルニア州は学科35問+実技試験を義務付ける。シンガポールは左側通行国ながら視力検査と安全講習を行い、在留12か月超に限定。日本の10問○×は“フリーパス”と映る。

ビジネス化する外免切替

試験の易しさと住所確認の緩さは、①右側通行国出身者の逆走事故、②任意保険未加入車による高額賠償難、③免許証を使った通信契約詐欺など複合リスクを誘発する。予約枠の「瞬間蒸発」を逆手に取ったブローカーが暗躍し、外免切替はビジネス化の様相すら呈している

想定されるリスク

  • 重大事故の増加と被害者救済の遅延
  • 外国免許→日本免許→国際免許を経由した“免許輸出”
  • 偽造在留カード・住民票による本人確認の崩壊

遅すぎる対策

警察庁は2025年5月22日、①観光・短期滞在者を外免切替の対象外とする、②全申請者に住民票の写し提出を義務付ける、③知識試験を30問に増やす案を公表した。テレ朝news だが問題の根は深い。

住民票売買という新たな火種

住民票義務化は「住民票さえ買えば免許が取れる」市場を生む懸念がある。偽造在留カードの闇取引は既に摘発例が相次ぎ、次のターゲットが住民票になるのは時間の問題だ。

ホテルのフロント住所を借りて郵送請求する手口、QRコード付き住民票を自家印刷する“住基エミュレーター”の出現など、現場の職員だけでは検知できない高度化が進む。

抑止策としては

  1. 入管情報システムと住基ネットをAPI連携し、在留期限切れ登録を自動遮断
  2. 住民票発行履歴を集中管理し、AIで異常枚数をリアルタイム検知
  3. 公務員の関与を防ぐ内部統制と罰則強化

住民票はマイナンバー、銀行口座開設、携帯契約など社会インフラの鍵である。外免切替厳格化が住民票流通の闇を肥大させれば、本末転倒だ。安全側に大きく振り子を振る覚悟が行政に求められる。

まとめ

外免切替は本来、長期定住者が早期に日本社会へ適応するための仕組みだ。しかし過剰な簡略化が事故と不正の温床になった。試験内容の高度化、保険加入証明の義務付け、在留・住基情報のリアルタイム照合、そして住民票管理の厳格運用という四輪駆動で、ようやく事故抑止というゴールに近づく。

真面目に手続を踏む外国人の権利を守るためにも、厳格化と透明性を両立させた制度設計が急務である。最後に強調したい——処分の甘さが被害者を二度苦しめないよう、速やかな法改正と実効性ある運用を期待する。

(本稿は2025年5月24日現在の報道・統計に基づき執筆した。)