虚偽の認知届で日本国籍を不正取得 ベトナム人ら3人逮捕――これは氷山の一角か?

外国人問題

茨城県警つくば署などの合同捜査班は、ベトナム人同士の子に日本国籍を不正に取得させる目的で、虚偽の認知届を提出した疑いで、愛知県名古屋市に住む自称飲食店店長の男(45)ら男女3人を逮捕しました。
罪状は「電磁的公正証書原本不実記録・同供用」。つまり、役所に虚偽の届出を行い、法的に正しい記録として扱わせたという重大な犯罪です。

この事件は、一見すると「個別の不正事件」のようにも思われます。
しかし、専門家の間では「これは氷山の一角にすぎない」との声が上がっています。


氷山の一角かもしれない――広がる偽装認知・偽装婚の闇

日本の国籍法では、日本人の父または母が認知すれば、外国籍の子どもでも日本国籍を取得できるという規定があります。
この制度は本来、国際結婚などで生まれた子どもの権利を守るために設けられたものです。
しかし近年、この制度を悪用して「偽装認知」により日本国籍を得るケースが後を絶たないのです。

報道によると、今回逮捕された3人は、実際には親子関係のない子どもを日本人男性が認知したように偽装し、戸籍に虚偽の記載をさせた疑いがあります。
この認知により、子どもは「日本国籍を持つ日本人」として扱われます。
つまり、在留資格や永住許可を経ずに“日本人”になれるという抜け道を悪用した形です。

こうした行為は、戸籍制度そのものを根底から揺るがす問題です。
しかも一度「日本人」として登録されると、取り消しや追跡は容易ではありません。
まさに“偽日本人”を生み出す危険な制度悪用といえるでしょう。


在留資格「定住者」とは何か? 不正の温床になりやすい理由

今回の事件でも関係が指摘されているのが、在留資格「定住者(ていじゅうしゃ)」です。
この資格は、日本人の配偶者や子、元日本人、日系人などに与えられる比較的自由度の高い在留資格です。
就労制限がなく、事実上どんな仕事にも就けるため、外国人にとっては非常に魅力的な資格です。

しかしこの「定住者」資格は、家族関係や血縁関係を証明する書類に基づいて与えられるため、
今回のような「虚偽の親子関係」「偽装婚姻」などによって、
不正に取得することも可能になってしまうのです。

実際、入管当局によると、偽装婚や偽装認知を経由して「定住者」を取得するケースが急増しており、摘発も難航しています。
特にベトナム、中国、フィリピンといった国からの来日者の一部では、
「在留延長」「就労自由化」を目的に偽装を行うブローカーが暗躍しているとされています。


「偽日本人」が増える未来――国籍制度の見直しが急務

今回のような事件が相次ぐ背景には、日本の国籍制度が“信頼ベース”に依存しているという構造的な問題があります。
つまり、「本人の申告」と「役所の書類受理」だけで国籍取得が成立してしまうのです。
DNA鑑定などの厳密な確認が義務付けられていないため、**虚偽の届出でも“法的には有効”**とされることがあります。

この仕組みを悪用すれば、

・ブローカーを介して金銭で「日本人親」を用意
・虚偽の認知届を提出
・子どもは日本国籍を取得
・その子を理由に「定住者」資格を申請


という一連のスキームが成立してしまいます。

これは明らかに日本の国益を損ねる行為であり、治安や社会保障制度への影響も無視できません。
“偽日本人”の増加は、日本という国のアイデンティティそのものを揺るがす問題でもあります。


いま求められる対策とは

こうした不正を防ぐためには、以下のような対策が求められます。

  1. 認知・婚姻に関するDNA鑑定の義務化
     → 実際の血縁関係を客観的に確認する制度の整備が急務です。
  2. 自治体窓口での本人確認の厳格化
     → 書類だけでなく、面談・調査を徹底すること。
  3. 入管と戸籍担当部署の情報連携強化
     → 「国籍取得」と「在留資格取得」が連動して悪用されないようにする。
  4. 虚偽届出に対する刑罰の強化と厳罰化
     → 現行法の懲役刑では抑止力が不十分との指摘もあります。

これらを実現するには、法改正だけでなく、行政現場の意識改革も欠かせません。
国籍を「簡単に取れる制度」にしておくことは、国家の安全保障上も極めて危険です。


まとめ:国籍を守るのは“制度”ではなく“意識”

今回のベトナム人による虚偽認知事件は、単なる外国人犯罪として片付けるべきではありません。
これは、日本人自身が「国籍」や「戸籍」の重みをどれだけ理解しているかを問う事件でもあります。

「誰でも日本人になれる国」であってよいのか。
「制度の甘さ」に頼ることで、私たちは何を失おうとしているのか。

国籍とは、単なる書類上の地位ではなく、
国家と個人を結ぶ「最も根本的な絆」です。
だからこそ、日本社会全体でこの問題に目を向け、
法制度の見直しと同時に、「国籍の価値を守る意識」を持つことが求められています。