社民党が「不法ではなく非正規・無登録と呼ぶべきだ」とする声明を発表しました。
在留資格のない移民や難民に対して「不法」という言葉を使うのは差別的であり、「非正規」「無登録」と言い換えるべきだという主張です。
一見すると「優しい共生社会」を目指すように聞こえますが、実は非常に危うい考え方です。

「不法」は法律上の正式な定義です
まず、「不法滞在」や「不法就労」という言葉は法律上の定義を持つ正式な用語です。
出入国管理及び難民認定法(入管法)では、在留資格の期限を超えて滞在する行為を「不法残留」と定めており、刑事罰の対象にもなります。
つまり、「不法」という言葉は単なる行政上の瑕疵を指しているのではなく、明確な法令違反行為を意味しています。
それを「非正規」や「無登録」と言い換えるのは、法的責任の重さをぼかす行為であり、適切ではありません。
「非正規」という言葉は本来、雇用形態を指す社会的な用語です。
したがって、「非正規滞在」などという表現は、法的にも社会的にも意味が異なります。

言葉を変えても現実は変わりません
言葉を変えれば、行為の性質まで変わるかのように考えるのは非常に危険です。
たとえば、「無免許運転」を「非登録運転」と呼んでも、違法行為が合法になるわけではありません。
不法滞在も同じであり、法を破っている以上、それは「不法」以外の何ものでもありません。
社民党の声明では、「犯罪者のように扱うのは差別だ」と述べていますが、違法行為を違法と指摘すること自体は差別ではありません。
法の下の平等とは、すべての人が同じルールに従うという原則の上に成り立っています。
そこに感情的な例外を持ち込めば、かえって不公平を生み出す結果になります。
「優しさ」の裏にある危うさ
こうした言葉のすり替えが進むと、最も不利益を受けるのは、真面目にルールを守って生活している外国人の方々です。
正規の手続きを経て在留資格を取得し、納税もしている外国人に対して「非正規でもいい」と言うのは、誠実な人々を軽視する発言です。
また、法を軽んじる言葉が広がることで、社会全体の秩序意識が薄れ、「法律を守る人が損をする社会」になる危険があります。
それは本当の意味での共生社会とは言えません。

結論:「不法」は「不法」です
社民党の主張は「言葉遣いの問題ではない」としていますが、まさにそのとおりで、これは法意識の問題です。
法律を軽視し、情緒や印象で言葉をすり替えることは、社会の根幹を揺るがす行為と言えます。
「不法」を「非正規」と呼び替えても、違法行為の事実は消えません。
社会の秩序と信頼を守るためには、現実を正しく言葉にし、法を尊重する姿勢が必要です。
「不法は不法です」。
この当たり前の原則を、今一度しっかり確認すべき時期にきているのではないでしょうか。


