訪日客のふりをしてわいせつ行為した中国人が不起訴に 示談の可能性と在留資格への影響を解説

外国人問題

東京・上野の「アメ横」で、訪日観光客を装った中国籍の男が、女性にわいせつな行為をしたとして逮捕されました。
ところがこの男性は、東京地検により不起訴処分となっています。
事件の概要とともに、不起訴の理由、さらに外国人が不起訴となった場合の在留資格への影響についても詳しく見ていきます。


■事件の概要

事件が起きたのは東京都台東区・上野の繁華街「アメ横」。
中国籍の30代男は観光客のふりをして、20代の女性に「道を教えてほしい」と声をかけました。
その後、「キスしてくれたらお金をあげる」などと発言し、ゲームセンター内でわいせつな行為をした疑いで逮捕されています。

しかし、東京地検は2025年10月31日付でこの男性を不起訴処分としました。
不起訴の理由については、検察側から明らかにされていません。


■不起訴処分とは?制度の仕組み

「不起訴」とは、検察官が裁判にかけない(起訴しない)という判断を下すことです。
不起訴の理由は大きく分けて次の3つに分類されます。

  1. 嫌疑なし(犯罪の証拠がない)
     犯罪行為が立証できない、あるいは事件そのものが誤解であった場合。
  2. 嫌疑不十分
     事件は起きたが、証拠が足りず有罪にできる見込みがない場合。
  3. 起訴猶予
     犯罪が成立しても、被害者との示談成立・反省の態度・初犯などを考慮し、あえて起訴しない場合。

この事件の場合、報道内容からみると「起訴猶予」=示談成立の可能性が高いと考えられます。
被害者が「もう処罰を望まない」と示す示談書を提出した場合、検察は「社会的制裁は十分」として不起訴にすることが多いのです。


■不起訴は「無罪」とは違う

注意すべきは、「不起訴=無罪」ではないという点です。
不起訴とは、裁判にかけないという検察官の判断にすぎません。
「罪を犯していない」という意味ではなく、「起訴するほどの必要性がない」「証拠が不十分」とされたケースも含まれます。

そのため、社会的には依然として「疑わしい人物」と見られ、再犯防止や監視が必要な場合もあります。


■外国人が不起訴になった場合の入管への影響

外国人が刑事事件で逮捕されると、たとえ不起訴であっても入管(出入国在留管理庁)による審査対象となります。
入管は、刑事処分とは別に「素行不良」や「公序良俗に反する行為」として、在留資格の更新を拒否することができます。

しかし、今回のように不起訴処分(特に示談による起訴猶予)の場合は、実際に強制退去や在留資格取消しになる可能性は低いのが現実です。
理由は、入管が判断の根拠とするのは「有罪判決」など明確な記録であり、不起訴では法的に「犯罪歴」が残らないためです。

つまり、この中国人男性は今後も日本に居続ける可能性が高いといえます。
実際、過去にも不起訴となった外国人が、そのまま在留資格を更新し続けている例は少なくありません。


■外国人による軽犯罪の“グレーゾーン”

問題は、こうした不起訴事例が増えることで、「軽い犯罪なら処分されない」という誤ったメッセージを与えてしまう点にあります。
観光客や留学生を装った外国人による性犯罪・窃盗・迷惑行為は全国で増加していますが、示談や証拠不十分で不起訴となるケースが多く、実質的に野放し状態になっているのです。

一方で、被害者側は「顔も名前も知らない外国人相手に裁判を続ける負担」が大きく、示談を選ばざるを得ない現実もあります。
その結果、外国人犯罪が統計上「存在しないもの」として処理され、実態が見えにくくなっているのです。


■まとめ

・中国人男性が「訪日観光客のふり」をして女性にわいせつ行為
・東京地検は不起訴処分(理由は非公表)
・示談成立による「起訴猶予」の可能性が高い
・不起訴=無罪ではない
・不起訴でも在留資格が維持され、日本に居続ける可能性あり
・外国人犯罪の“見えない化”が進行している


今回の事件は、単なる個人犯罪として片づけられる問題ではありません。
訪日外国人の増加に伴い、観光客を装った軽犯罪が各地で増加している現実があります。特に観光地や繁華街では、「外国人だから仕方ない」と警戒が緩む場面も多く、被害者が「言葉が通じない」「トラブルにしたくない」と泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。

不起訴となった場合、刑事記録が残らず、入管による強制退去の対象にもなりにくいのが現状です。つまり、今回のようなケースでは、実質的に何の制裁も受けずに日本社会に残ることができてしまう可能性があります。これは制度上の盲点であり、被害者にとっては非常に不公平な結果といえます。

司法と入管の連携は形式的には存在しますが、実務上は「不起訴=不問」と扱われることも多く見られます。今後は、不起訴であっても外国人による反社会的行為が確認された場合には、在留資格の見直しや再入国の制限など、より厳格な対応が必要だと考えます。

また、被害者が安心して声を上げられる仕組みづくりも重要です。
「観光立国」を掲げる以上、外国人の受け入れと同時に治安維持の仕組みを強化しなければ、真面目に訪日している外国人にとっても不公平な社会になってしまいます。
不起訴で終わらせるのではなく、今回の事件をきっかけに、刑事制度と入管制度の連携をより実効性のある形に見直すことが求められています。