2025年の夏以降、外国人の「強制送還」が急増しています。
出入国在留管理庁(入管)は、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(2024年5月発表)を掲げ、不法滞在者の排除を加速させています。
この方針により、難民申請中や在留資格の更新が認められなかった外国人の送還が進み、日本生まれの子どもまで送還対象となるケースが報告されています。
今までが「甘すぎた」日本の入管行政
これまで日本の入管行政は、他国と比較して「寛容すぎる」との指摘がありました。
特に難民申請者については、審査中であっても在留が事実上認められ、就労も可能な状態が続いていました。
また、在留期限を過ぎても子どもが日本の学校に通っている場合や、地域との関係が深い場合、「人道的配慮」という名目で滞在を黙認する傾向が強かったのです。
しかし、こうした「例外対応」が積み重なった結果、不法残留者が増加し、日本の入管制度そのものの信頼性が揺らぎました。
入管庁が強制送還を加速させているのは、長年の「放置状態」を是正する動きとも言えます。

「家族の実態」をめぐる議論
最近では、スリランカ人の男性が日本で難民認定と在留資格の付与を求めた訴訟で、控訴が棄却されました。
裁判所は、「敵対政党による迫害の恐れがあっても、スリランカ政府が本人を保護する意思があると推認される」と判断し、難民としての保護を認めませんでした。
この判断について、支援団体からは「家族として日本で生活してきた実態を無視している」と批判の声も上がっています。
一方で、法の下で平等に審査を行い、虚偽の難民申請や制度の悪用を防ぐ観点からは、妥当な判断だと評価する意見もあります。
「本来の姿」に戻りつつある日本の入管
入管行政は、あくまで法治国家としての「秩序」を守るために存在します。
本来、在留資格がない外国人は原則として帰国するのが当然のルールです。
日本が長年、「人道的配慮」や「社会的事情」を理由に特例を設けてきたことが、かえって制度の形骸化を招いた面も否めません。
今回の強制送還の増加は、厳格な法運用への「原点回帰」とも言えるでしょう。

今後の見通し
「不法滞在者ゼロプラン」によって、今後さらに摘発や送還が強化される可能性があります。
特に、
- 難民申請の乱用防止
- 在留資格を失った後の不法就労対策
- 虚偽婚姻や虚偽認知による国籍取得の防止
など、制度の運用が一段と厳しくなることが予想されます。
一方で、長期に日本で生活している家族や日本生まれの子どもたちに対する「人道的配慮」の在り方については、社会的議論が続くでしょう。
まとめ
強制送還の増加は、一見すると「冷たい政策」に見えるかもしれません。
しかし、法の秩序を守ることは、結果的に日本社会の公平性と安全を保つことにつながります。
今夏以降の入管行政の動きは、「厳しさ」ではなく「正常化」への一歩と言えるのではないでしょうか。




