京都府警は2025年11月、京都市内で不法残留のインドネシア人19人を住まわせていたとして、48歳の男を入管法違反(不法残留助長)の疑いで逮捕しました。調べによると、男はアパートの一室を借り上げ、期限の切れた在留カードを持つインドネシア人らをまとめて住まわせていたとされています。
部屋はわずか2LDKほどの広さで、19人が雑魚寝するような状態。キッチンやトイレは共同で、プライバシーはほぼない環境でした。警察が家宅捜索を行った際には、食料品や衣服が散乱し、生活環境は劣悪だったといいます。
男は容疑を認めており、「仕事を紹介してやれば感謝されると思った」と供述しています。実際、住民の多くは京都市内や大阪方面の建設現場、清掃業などで働いており、ブローカーを通じて日雇いの仕事を得ていたとみられます。
■「不法残留の巣窟」は全国に広がる
この事件は決して特殊なものではありません。日本各地で同様の「不法残留者シェアハウス」が摘発されています。特に京都や大阪、愛知などの都市圏では、外国人同士がSNSなどで連絡を取り合い、安価な部屋を借りて共同生活するケースが増えています。
不法残留者を匿う行為は明確に犯罪であり、**入管法第73条の2(不法残留者の雇用・宿泊助長等)**により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。それでも摘発が追いつかないのが現状です。
警察関係者は、「このようなケースは氷山の一角。見つかっていないだけで、似たような拠点はまだまだある」と語っています。

■ 不法残留者が増える背景
法務省によると、2025年時点で日本に滞在する不法残留者は約8万人。そのうち、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピン出身者が大半を占めています。特にインドネシア人の増加が顕著で、技能実習制度の失踪者がそのまま不法滞在に移行するケースが多いとされています。
背景には、次のような要因があります。
- 日本での賃金が母国より高い
- 失踪してもすぐには見つからないという認識
- 同郷者によるコミュニティの存在
- ブローカーによる斡旋ネットワークの拡大
中でも問題なのは、日本人側の協力者が存在することです。今回の事件でも、部屋を貸していた男が意図的に在留資格を確認せず、金銭を得ていたとみられています。

深夜までカラオケ・宴会で騒音が絶えない外国人10数人が住む一軒家
建築会社の寮だと思われる
■ 行政・警察の対応は限界に近い
出入国在留管理庁(入管庁)は定期的に全国一斉取り締まりを行っていますが、人的リソースには限界があります。不法残留者の多くは労働力として現場に溶け込んでおり、「雇う側」「住まわせる側」もまた日本人であることが少なくありません。
このため、単なる「外国人問題」ではなく、日本社会が不法滞在を助長している構造的問題といえます。
行政書士や在留資格の専門家の間でも、こうした構造的な歪みが議論されています。「外国人労働者の受け入れを進める一方で、失踪者への対策が後手に回っている」との指摘も多くあります。
■ 現場から見える「制度の限界」
技能実習制度や特定技能制度は、本来、外国人が日本で技能を身につけ、母国の発展に貢献することを目的としています。しかし、現場では「人手不足の穴埋め」として機能しており、制度の理想とはかけ離れた状況です。
その結果、失踪・不法残留・不法就労が連鎖し、今回のような事件につながっているのです。特に地方では、監督の目が届きにくく、実態把握は困難です。
■ 市民の通報が重要に
警察や入管庁も、こうしたケースの多くを「近隣住民からの通報」で把握しています。たとえば、
- 夜中でも大勢の外国人が出入りしている
- ごみの量が異常に多い
- 部屋に不特定多数が住んでいる
といった異変があれば、通報がきっかけで摘発につながることがあります。
ただし、住民同士の摩擦を避けるため、行政も慎重な対応を求められます。外国人差別と治安維持の線引きが難しいのも現実です。
■ 今後求められるもの
今回の京都の事件は、単なる一逮捕にとどまらず、不法残留者を取り巻く日本社会の脆弱さを浮き彫りにしました。
政府は2025年度中にも、技能実習制度を「育成就労制度」に移行させ、より厳格な管理体制を整える方針ですが、根本的な課題は依然として残ります。
法改正や取り締まり強化だけでなく、雇用主・貸主・仲介業者など日本人側の責任意識を高めることが不可欠です。
不法残留者の存在は、単に入管行政の問題ではありません。地域社会の治安、労働市場の健全性、そして制度の信頼性そのものを揺るがす問題です。
京都で起きたこの事件は、まさに「氷山の一角」なのです。





