荒川区で飲食店やバーを経営していると、人手不足の中で「留学生をキャバクラ・ガールズバーで雇えないか」と考える場面は少なくありません。特に水商売の業態では、夜間の人材確保が難しく、外国人留学生に頼りたくなるのが実情です。
しかし結論から言えば、水商売における留学生の雇用は、ほとんどのケースで違法となります。そして問題は、「明らかに違法なケース」だけでなく、「経営者が合法だと思い込んでいるグレーなケース」こそが、実務上もっとも危険である点にあります。
本記事では、水商売と留学生雇用の関係を、入管法の条文と実務運用の両面から深く解説します。
なぜ水商売は原則として全面禁止なのか
留学生は「留学」という在留資格で日本に滞在しています。この在留資格の本来の目的はあくまで学業であり、就労は例外的にしか認められていません。
この例外が「資格外活動許可」ですが、この許可には明確な限界があります。単に「週28時間以内であれば働ける」という単純なルールではなく、そもそも働くことが許されない業種が存在します。その代表が、いわゆる水商売、すなわち風俗営業に該当する業態です。
入管法そのものは「風俗営業」という言葉を直接詳細に定義しているわけではありませんが、実務上は風営法の枠組みと連動して判断されます。つまり、接待を伴う飲食店や、遊興性の高い営業形態は、留学生の就労先として不適切であるとされているのです。
重要なのは、ここでの判断が「仕事内容」ではなく「店舗の性質」で行われるという点です。たとえ皿洗いであっても、その店舗が風俗営業に該当する以上、就労は認められません。

「水商売ではない」という思い込みが一番危険
実務上、最も多いトラブルは、経営者側が自店舗を水商売だと認識していないケースです。
例えばガールズバーやスナックについて、「接待はしていないから問題ない」と考えている事業者は少なくありません。しかし入管や警察は、形式的な説明ではなく、実態を見て判断します。カウンター越しであっても、特定の客と継続的に会話し、酒を提供し、雰囲気として遊興性が強ければ、それは実質的に接待と評価される可能性があります。
荒川区のように小規模店舗が多い地域では、営業形態が曖昧になりやすく、「普通のバーのつもりが実質的には風俗営業と同視される」というケースが現実に起きています。このズレが、そのまま違法雇用につながります。
ケース①:普通の居酒屋 → OK
- 接待なし
- 一般的な接客
👉 問題なし
ケース②:深夜営業のバー → 要注意
- 深夜営業
- カウンター越し接客
👉 風営法の届出次第でアウトになる可能性あり
ケース③:ガールズバー → 実務上ほぼNG
- 接待なしと主張していても
- 実態が「接待」と判断されやすい
👉 入管・警察ともに厳しく見ます
ケース④:キャバクラ → ほぼアウト
- 常連客との会話
- カラオケ接待
👉 典型的な風俗営業
入管法上の責任は「知らなかった」では逃げられない
ここで問題になるのが、出入国管理及び難民認定法における事業者の責任です。
まず、入管法第19条の16は、雇用主に対して在留カードの確認義務を課しています。これは単なる身分証の確認ではなく、その外国人が「適法に就労できるか」を判断する責任を含んでいます。したがって、在留カードを一度見ただけで安心するのは不十分であり、資格外活動許可の有無や在留期限まで含めて継続的に確認しなければなりません。
さらに重いのが、入管法第73条の2に定められる不法就労助長罪です。この規定は、不法に働く外国人を雇用した場合に、事業者側も処罰対象とするものです。実務上のポイントは、「故意」でなくても責任が問われ得るという点です。つまり、十分な確認をせずに結果として違法就労となった場合でも、「注意義務違反」として責任を問われる可能性があります。
特に水商売の分野では、そもそも業種自体がNGであるため、「知らなかった」「裏方だから大丈夫だと思った」といった言い訳は通用しません。
28時間ルールよりも本質的な問題
留学生雇用というと「週28時間」という数字ばかりが注目されがちですが、水商売においてはこの議論自体が本質を外しています。
なぜなら、業種が禁止されている場合、労働時間が1時間であっても違法だからです。
実務では、他業種においても28時間管理の不備は問題になりますが、水商売の場合はそれ以前の段階で違法性が確定してしまいます。この点を誤解したまま、「時間さえ守れば大丈夫」と考えている事業者が非常に多く、これが摘発の温床になっています。
見落とされがちなAV出演問題とその法的リスク
近年、特に増えているのが、留学生によるアダルトビデオ出演やそれに類する業務への関与です。一見すると店舗経営とは無関係に思えるかもしれませんが、実務上は密接に関連するケースが少なくありません。
例えば、店舗の関係者が紹介した、場所を提供した、あるいは単に黙認していたといった場合でも、関与の程度によっては責任を問われる可能性があります。
法的には、これらの行為は資格外活動の範囲を明らかに逸脱しており、入管法第19条違反に該当します。しかも風俗関連業務と評価されるため、通常のアルバイト違反よりも重く扱われる傾向があります。
留学生本人にとっては在留資格の取消や強制退去につながり、事業者側も不法就労助長罪のリスクを負うことになります。荒川区周辺でも、SNSを通じた勧誘が増えており、経営者が無関係でいられない状況が生まれています。

入管は「書類」ではなく「現場」を見る
最後に強調しておくべきなのは、入管の判断基準です。
多くの事業者は、雇用契約書や在留カードのコピーを揃えていれば問題ないと考えています。しかし実際の調査では、書類よりも現場の実態が重視されます。
調査では、従業員が実際にどのような業務を行っているか、誰の指示で動いているか、シフトと実態が一致しているかといった点が細かく確認されます。そして何より重要なのが、従業員本人の発言です。現場での何気ない一言が、違法性の認定につながることも珍しくありません。
水商売のようにグレーゾーンが多い業態では、この「実態判断」によって一気に違法と認定されるリスクが高まります。
まとめ
荒川区における留学生雇用は、適切に運用すれば有効な人材確保手段になります。しかし水商売に関しては、その前提が大きく異なります。
業種自体が就労禁止の対象となるため、労働時間や仕事内容での調整は意味を持ちません。また、ガールズバーやスナックのようなグレー業態は、実務上ほぼアウトと評価されるリスクを常に抱えています。
さらに、AV出演などの風俗関連行為も含め、入管法上の違反は事業者側にも直接的な責任をもたらします。
最終的に重要なのは、「大丈夫だろう」という感覚ではなく、法的に説明可能かどうか、そして実態として適法かどうかです。
水商売で留学生を雇うことは、原則として避けるべきであり、それが最も確実なリスク回避策であると言えます。
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