埼玉県川口市に集住するトルコの少数民族クルド人が、毎年10月から難民認定申請を増やし、3月にピークを迎えた後に急減するという特定の周期があることが、政府の閣議決定した答弁書から明らかになった。このデータによれば、トルコ国籍者の難民申請数は令和4~6年の3年間で、最も多い月は3月(累計653人)、最も少ない月は9月(185人)だった。
この周期的な増減の背景には、クルド人の生活様式や就労事情が関係しているとみられている。特に、彼らの母国トルコでの生業である牧畜や農業の繁閑期が影響している可能性が指摘されている。
本記事では、この周期的な難民申請の実態を分析し、日本の難民申請制度のルールや課題、今後の対策について詳しく解説する。
クルド人の難民申請の実態とデータ
2024年3月28日、政府は松原仁・元拉致問題担当相の質問主意書に対する答弁書を発表し、過去3年間(令和4~6年)のトルコ国籍者の難民申請数の推移を明らかにした。それによると、申請者数には以下のような特徴がある。
- 10月から増加し、3月にピークを迎える
- 4月以降に急減し、9月に底を打つ
- その後、再び10月から増加する
このような周期的な申請パターンが確認されたのは初めてであり、単なる偶然とは考えにくい。では、なぜこのような現象が起きているのか?

クルド人の就労事情と難民申請の関係
このデータの背景にある要因の一つとして、クルド人の母国トルコでの生活様式が挙げられる。クルド人はトルコ国内で牧畜や農業に従事していることが多く、これらの仕事には明確な繁閑期が存在する。
- 秋(10月~3月):農閑期にあたるため、仕事が少ない
- 春~夏(4月~9月):農繁期に入り、仕事が増える
つまり、彼らはトルコでの仕事が少ない時期に日本に来て難民申請をし、一部は翌年の春~夏に申請を取り下げてトルコへ戻っている可能性がある。
これは、「本当の難民であれば帰国できないはず」という難民制度の根本的な考え方に矛盾する行動である。実際、日本で難民申請をすることで合法的に滞在し、働くことができる制度を利用し、出稼ぎ目的で来日しているケースが少なくないと指摘されている。
日本の難民申請制度のルール
日本における難民認定申請は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」に基づいて行われる。以下に、日本の難民申請制度の主要なルールを整理する。
(1) 難民申請の条件
日本で難民として認定されるためには、以下のいずれかの理由で母国に帰国できないことを証明する必要がある。
- 人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがある
- 拷問や非人道的な扱いを受ける可能性がある
単なる経済的な理由(仕事がない、生活が苦しい)では、難民として認定されることはない。
(2) 難民申請中の在留資格と労働許可
難民申請者は、申請後一定期間が経過すると「特定活動」の在留資格を得て、日本国内で就労することが認められる。この仕組みが、制度の悪用を招いていると指摘されている。
(3) 難民申請の審査期間と結果
難民申請の審査には1年以上かかることが多い。結果は以下のいずれかになる。
- 難民認定される(非常に少数)
- 不認定となる(多数)
- 不認定後に異議申し立てをする(その間も滞在が可能)
日本の難民認定率は非常に低く、2022年は約1.1%だった。
(4) 再申請の仕組み
難民申請は、一度却下されても再申請が可能。このため、何度も申請を繰り返し、日本に長期間滞在する外国人が後を絶たない。

今後の対策と提言
このような問題を解決するためには、日本の難民制度を見直し、より厳格な運用を行う必要がある。具体的な対策として、以下のような施策が考えられる。
- 難民申請の厳格化
- 申請の回数や理由をより厳しく審査し、明らかに経済目的と判断されるケースは早期に却下する。
- 在留資格認定証明書交付申請の基準を強化
- 日本に来る外国人が適切な目的で滞在しているかを厳しくチェックし、出稼ぎ目的の申請を防ぐ。
- 再申請の回数制限
- 却下された申請者が短期間で再申請できないようにし、不適切な申請を抑制する。
- 審査期間の短縮
- 難民認定審査のスピードを上げ、長期間の滞在を狙った悪用を防ぐ。
- 一時的な労働許可の見直し
- 難民申請者に与えられる労働許可の条件を厳格化し、真に保護が必要な人だけに適用する。
まとめ
今回のデータが示すように、クルド人の難民申請には明確な周期があり、日本の難民制度の抜け穴を利用した出稼ぎ目的の可能性がある。
日本の難民制度を適切に運用するためにも、審査の厳格化、再申請回数の制限、労働許可の見直しなどの対策を進めることが急務である。