2025年3月、PKKは反政府闘争の即時停戦を宣言しました。武装解除や組織解散が実現するかは不透明ですが、トルコ国内のクルド人の状況に大きな変化が生じる可能性があります。これを受けて、トルコ国内のクルド人の一部から「クルド人が難民申請する口実がなくなった」との声が上がっています。
1. クルド人の背景
クルド人は、トルコ、イラン、イラク、シリアの国境地帯にまたがる民族で、人口は約3,000万人と推定されています。彼らは独自の文化や言語を持ち、長年にわたり独立や自治を求めてきました。しかし、これらの国々ではクルド人に対する差別や迫害が続き、特にトルコでは、クルド語の使用制限やクルド文化の抑圧が問題視されてきました。
トルコでは、クルド人の権利拡大を求める非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」が、政府との間で武力衝突を繰り返してきました。PKKは1984年に武装闘争を開始し、以降、トルコ政府との間で数万人規模の死傷者を出す紛争が続いていました。この紛争を理由に、多くのクルド人が迫害を恐れ、他国へ難民として逃れることを選びました。

2. PKKの停戦宣言と難民申請への影響
2025年3月、PKKは反政府闘争の即時停戦を宣言しました。武装解除や組織解散が実現するかは不透明ですが、トルコ国内のクルド人の状況に大きな変化が生じる可能性があります。これを受けて、トルコ国内のクルド人の一部から「クルド人が難民申請する口実がなくなった」との声が上がっています。
日本に滞在するクルド人の多くは、トルコ国内での迫害を理由に難民申請を行っていました。しかし、PKKと政府の和平が実現すれば、これらの主張は通用しなくなる可能性があります。難民申請を行う際には、「迫害の恐れがあること」を証明する必要がありますが、トルコ国内の紛争が終息に向かえば、クルド人の難民認定がますます困難になるでしょう。
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3. 日本におけるクルド人の難民申請の現状
日本では、クルド人の難民認定は極めて低い割合でしか認められていません。2010年以降、日本政府はトルコ出身のクルド人に対し、ほとんど難民認定をしていません。そのため、多くのクルド人が難民申請を繰り返しながら仮放免の状態で生活しています。
仮放免とは、強制退去処分が確定したものの、健康上の理由や帰国できない事情がある場合に、一時的に拘束を解かれる制度です。ただし、仮放免中の外国人には就労許可がなく、生活が非常に厳しい状況に置かれます。埼玉県川口市や蕨市にはクルド人コミュニティが形成されており、多くのクルド人がこの制度を利用しながら生活しているのが実態です。
4. 今まで難民申請していたクルド人のこれからは?
PKKとトルコ政府の和平が進展すれば、難民申請の根拠が失われ、日本政府がクルド人の難民認定をさらに厳格化する可能性があります。すでに、難民申請をしていたクルド人の中には、「今後も日本に滞在できるのか」という不安を抱える人々が増えています。
日本では、3回目以降の難民申請者に対する強制送還を可能とする改正入管法が2024年に施行されました。これにより、過去に申請が却下されたクルド人が新たに申請をしても、特別な事情がなければ即座に退去強制の対象となる可能性が高まっています。
5. 強制送還の可能性と課題
改正入管法の施行により、日本に滞在するクルド人のうち、難民認定を受けられなかった人々は強制送還の対象となります。特に、PKKの停戦宣言によってトルコ国内の安全が確保されたと判断されれば、日本政府はクルド人の送還を本格化させる可能性があります。
しかし、長期間日本に滞在していたクルド人や、その子供たちを強制送還することには慎重な対応が求められます。日本で生まれ育ったクルド人の子供たちは、日本語しか話せず、トルコでの生活基盤もありません。彼らを親とともに送還することは、人権上の問題を引き起こす可能性があります。
また、強制送還に反対する人権団体や弁護士団体もあり、今後、法的な争いに発展する可能性も考えられます。日本政府は、個々のケースに応じた慎重な対応を迫られることになるでしょう。
しかし、強制送還は必要なものと筆者は考えます。

6. 日本で生まれ育ったクルド人の子供たちは?
現在、日本には在留資格のないクルド人の子供が多数存在しています。彼らは日本の公立学校に通い、日本語を第一言語として育っています。しかし、両親が在留資格を持たないため、子供たちの将来も不安定なものになっています。
日本政府は、特別在留許可を与えるケースもありますが、明確な基準がないため、一部のクルド人家族は不安を抱えながら生活しています。特に、親が強制送還された場合、子供がどのような処遇を受けるのかが大きな問題となります。
しかし、クルド人の子供にも強制送還は必要なものと筆者は考えます。
7. まとめ
PKKの停戦宣言により、トルコ国内のクルド人に対する迫害の状況が変化しつつあります。これにより、日本に滞在するクルド人の難民申請の根拠が薄れ、今後の難民認定がさらに厳格化する可能性があります。
日本では、改正入管法の施行により、3回目以降の難民申請者の強制送還が可能となりました。PKKとトルコ政府の和平が進めば、日本政府はクルド人の送還を本格化させると考えられます。
しかし、日本で生まれ育ったクルド人の子供たちの処遇や、長期間日本に滞在していたクルド人の帰国後の生活には慎重な配慮が必要です。日本政府は、国際的な人道基準を考慮しながら、適切な判断を下すことが求められますが、強制送還は今の川口市を見れば必要なことになるでしょう。
今後の展開次第では、日本における難民政策や外国人の受け入れ体制の在り方が、さらに議論されることになるでしょう。
