近年、世界各地で紛争や迫害が続く中、多くの人々が安全と平和を求めて他国へ避難しています。日本においても、難民問題は重要な課題となっており、その中でもクルド人難民に関するニュースが注目を集めています。埼玉県では、特に川口市にクルド人コミュニティが形成され、多くのクルド人が難民申請を行っています。
しかし、2023年6月の入管法改正により、難民申請中の外国人に対する強制送還が実施されるケースが増えました。本記事では、埼玉でのクルド人強制送還の実態と、それを取り巻く法制度の問題について詳しく解説します。
難民申請とは?
難民申請とは、母国での迫害や紛争から逃れ、安全な生活を求める人々が他国に保護を求める手続きです。日本では、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、難民認定の申請が行われます。申請者は、入管庁に難民認定申請を提出し、審査を受けます。しかし、日本の難民認定率は極めて低く、2022年の認定率は約0.7%とされています(※参考:法務省統計)。このため、多くの申請者が不認定となり、在留資格を失うことになります。
埼玉県で起きたクルド人強制送還のニュース解説
ニュース① TBS NEWS DIGの記事(2024年3月)
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【3回以上の難民申請者17人を強制送還 入管庁が改正入管法運用状況を公表 在留外国人は約376万9000人と過去最多】
TBS NEWS DIGの報道によると、埼玉県に住むクルド人の男性が入管当局によって強制送還されたことが大きな話題となりました。この男性は、過去に数回の難民申請を行っていましたが、いずれも認定されませんでした。2023年の改正入管法により、3回以上の難民申請を行っている外国人は、特別な理由がない限り強制送還が可能となったため、今回の送還が実施されたとされています。
このニュースのポイントは以下のとおりです。
①送還された男性の背景
- 彼はトルコ出身のクルド人で、母国での迫害を理由に日本に逃れてきた。
- 日本では埼玉県で生活していたが、在留資格が認められず、難民申請を繰り返していた。
②送還が実施された理由
- 3回以上の難民申請を行っており、最新の申請が認められなかったため、改正入管法に基づき強制送還が決定。
- 支援者による嘆願があったものの、最終的に送還が実行された。
③強制送還の問題点
- 送還先のトルコでは、クルド人への迫害が続いており、男性が帰国後に危険な状況に置かれる可能性がある。
- 日本の難民認定制度が国際基準と比較して厳しく、本当に保護が必要な人が救われていない可能性がある。
このニュースは、日本の難民政策の問題点を浮き彫りにしました。一方で、入管庁は「適切な法運用の結果」と説明しており、立場の違いが明確になっています。
ニュース② Yahoo!ニュースの記事(2024年3月)
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【難民申請複数回の半数はトルコ国籍 川口のクルド人男性は5回目不認定もなお滞在中 「移民」と日本人】
Yahoo!ニュースの記事では、クルド人の強制送還が日本国内で引き起こした影響や、支援者の反応について詳しく報じています。特に、難民申請者の家族や地域社会への影響が焦点となっています。
①クルド人コミュニティの動揺
- 埼玉県川口市のクルド人コミュニティでは、今回の強制送還に大きな衝撃が走った。
- 「次は自分が送還されるのではないか」と不安を抱える難民申請者が増加。
②支援団体の批判
- 難民支援団体は「日本の難民認定基準が厳しすぎる」と批判。
- 国際基準に沿った難民保護制度の必要性を訴えた。
③地域住民の意見の分かれ
- クルド人の増加による治安の悪化を懸念する声も一部で上がっている。
- 一方で、共生の道を模索すべきだとの意見も。
このニュースは、日本の社会全体における外国人の受け入れ問題を浮き彫りにしました。

強制送還に対する賛否の声
改正入管法による強制送還の実施に対し、賛否両論が存在します。
●反対の立場
・人権団体や支援者は、「日本の難民認定率が極めて低く、本当に保護が必要な人が送還される可能性がある」と懸念。
・母国に戻ることで迫害を受ける可能性があるケースもある。
●賛成の立場
・不法滞在者や難民制度の濫用を防ぐために必要な措置。
・適切な手続きを踏まえたうえでの強制送還は、法の厳格な運用として妥当。
筆者としては、強制送還が完全に悪いとは思いません。日本の限られた社会資源の中で、本当に保護が必要な人を適切に支援するためにも、制度の厳格な運用は不可欠です。ただし、現行の法律が時代に即しているかどうかは議論の余地があります。
難民申請中にできること、できないこと
日本では、難民申請中の人々に対して一定の権利と制限が設けられています。
できること
✅ 日本国内での居住(仮滞在許可がある場合)
✅ 難民申請後6か月経過後の就労(許可を得た場合)
✅ 弁護士や支援団体への相談
できないこと
❌ 許可なしでの就労(仮放免中は就労不可)
❌ 海外渡航
❌ 長期間の住所不定(逃亡のリスクと見なされる)
仮放免中の外国人の場合、さらに厳しい制限が課され、原則として就労は認められません。
まとめ
法の不備と今後の課題
- 難民認定基準の厳しさ
- 収容の長期化
- 不法滞在者への対応
今後、日本の難民制度をより公平かつ実効的なものにするためには、法律の改正が不可欠です。
埼玉県におけるクルド人強制送還の実態は、日本の難民政策や入管法の課題を浮き彫りにしています。強制送還は必要なことですが、本当に保護が必要な人が適切に支援される仕組みを作ることが重要です。
今後、日本の難民政策がどのように変化するのか、引き続き注目する必要があります。
