2025年4月10日、兵庫県神戸市で、留学目的で来日した32歳の外国人女性が、不法残留の疑いで逮捕されました。逮捕容疑は、2016年に留学目的で来日し、更新を経て20年7月までの在留期限を過ぎた後も、神戸市内などに居住し、不法残留した疑い。
日本には「留学」という名目で入国したものの、在留期間を超えて違法に滞在する外国人が少なくありません。今回の事件は、そうした不法残留の実態が表面化した一例に過ぎないのかもしれません。
不法残留の現状
法務省の統計によれば、2025年3月時点で日本における不法残留者数は約7万4,000人とされています(※参考:産経新聞)。この数は過去と比較すると減少傾向にありますが、単に統計上の数字が減っているだけで、実態としては見えにくい形で不法滞在が続いている可能性も考えられます。

過去の不法残留者逮捕事例
日本では、過去にも不法残留が原因で逮捕された事例がいくつか報告されています。例えば:
- 2023年・東京都:フィリピン国籍の男性(38歳)が、観光ビザで入国後、そのまま不法滞在し、工場で働いていたところを摘発。
- 2022年・大阪府:ベトナム国籍の女性(27歳)が、技能実習生として来日後、契約終了後も日本に滞在し続け、不法残留で逮捕。
- 2021年・愛知県:タイ国籍の男性(40歳)が、飲食店で働きながら不法滞在し、偽造在留カードを使用していたことが発覚し逮捕。
これらの事例に共通するのは、
- 一度合法的に入国したが、その後不法残留となった。
- 生活のために違法に就労していた。
- 一部では偽造在留カードを使用していたケースもあった。
という点です。これらの問題は現在も続いており、当局の取り締まりが求められています。
不法残留者の生活実態
不法残留者がどのように生活しているのかについても、いくつかのパターンが見られます。
1. 違法な就労
不法残留者の多くは、正式な在留資格を持たないため、正規の企業では働くことができません。しかし、
- 工場、建設現場、農業:低賃金で働く外国人労働者が必要とされる分野では、不法就労が横行している。
- 飲食業、コンビニの深夜バイト:外国人労働者が多く、不法残留者が紛れ込むケースもある。
- 風俗業、マッサージ店:特に女性の不法残留者が働くケースも多く、問題視されている。
2. 住居環境
正規の賃貸契約を結ぶことが難しいため、不法残留者は以下のような形で住まいを確保しています。
- 外国人コミュニティのシェアハウス:不法滞在者同士で共同生活をするケースが多い。
- 職場に寝泊まり:建設現場や工場などで働く場合、職場に簡易的な住居が提供されることもある。
- ネットカフェやカプセルホテルを転々:仕事が安定しない場合、宿泊施設を利用することもある。

当事務所付近の外国人シェアハウス。自転車の数は15台以上だ…
3. 支援団体の存在
日本国内には、不法残留者を支援する団体も存在しています。
- NGOやNPO団体:不法滞在者向けに医療支援や食料提供を行っている。
- 宗教団体の支援:教会や寺院が外国人労働者を受け入れ、生活支援をしているケースもある。
数字の裏にある現実
統計上は不法残留者数が減少しているように見えるものの、その背景にはいくつかの要因が考えられます。
生活保護の受給が容易になっている
以前であれば、経済的に困窮した外国人が不法残留者となるケースが多かったのですが、近年は生活保護を受給しながら合法的に滞在を続ける外国人も増えています。これにより、本来ならば不法残留になっていたはずの人が統計上「合法的な滞在者」としてカウントされている可能性があります。
富裕層の経営・管理ビザの活用
一方で、資産を持つ外国人は「経営・管理」ビザを活用し、500万円の資本金を投資することで正規の在留資格を取得しています。このような手続きを通じて、合法的に長期滞在を実現している外国人も少なくありません。
例えば、両親の援助を受け、卒業と同時に経営・管理ビザを取得する中国人留学生は少なくありません。

不法残留対策の必要性
不法残留者の問題を解決するためには、以下のような対策が求められます。
1. 在留資格の適正な管理
入国管理局による厳格な審査と監視が不可欠です。特に、留学ビザで入国した外国人の在籍確認や就学状況のチェックを強化し、不正な滞在を未然に防ぐ体制を整える必要があります。
2. 生活保護制度の見直し
外国人に対する生活保護支給の基準を明確にし、本当に支援が必要な人に限定する制度運用が求められます。適切な基準を設けることで、本来ならば不法残留になっていた人が制度を悪用して滞在を続けるケースを減らすことができます。
3. 違法就労の取り締まり強化
企業側が不法就労を助長しないよう、厳しい罰則を適用し、外国人労働者の雇用管理を徹底することが必要です。
4. 日本社会への統合支援
外国人が適切な形で日本社会に適応できるような仕組みづくりも重要です。日本語教育の充実や、合法的な在留資格を持つ外国人の就職支援を強化することで、不法滞在を減らすことができるでしょう。
まとめ
今回の神戸での不法残留者逮捕は、氷山の一角に過ぎません。不法残留者数が減少しているように見えても、その背景には生活保護の受給増加や富裕層による合法的なビザ取得など、統計では見えにくい問題が潜んでいます。
アメリカでは不法移民問題が深刻であり、不法滞在者に対する厳格な取り締まりと同時に、一部には市民権を与える政策も検討されています。韓国では、外国人労働者の管理を厳しくし、不法滞在者に対する強制送還の方針を徹底しています。日本もこれらの国々の例を参考に、適切な対策を講じるべきでしょう。
不法滞在問題を解決するためには、在留資格の適正管理、生活保護制度の見直し、違法就労の取り締まり強化が不可欠です。外国人と日本社会が共存できる仕組みを整え、適正な在留管理を実現することが、今後の大きな課題となるでしょう。