「日本で産めば強制送還されない」クルド人が増加する理由がここにもあった!出産ラッシュのクルド人

外国人問題

クルド人に限った問題ではないが、地方行政も一部の外国人による負の影響に苦しんでいる。その一つが自治体医療における外国人による未収金や入院助産制度利用の増加である。川口市が公表しているデータは国籍別の数字を示していないものの、令和4年度決算で未収金3億9656万円のうち外国人分は7471万円(18.8%)を占め、産婦人科に限ると24.0%に上ると報じられている。
ダイヤモンド・オンライン

この数字は外国人比率7.6%という人口構成を大きく上回り、「医療費不払い」が特定集団に偏っている可能性を示唆する。

近年、川口・蕨地区に集中居住するトルコ国籍クルド人の在留者は推定2000〜3000人とされ、難民申請長期化に伴う仮放免状態の人も少なくない。彼らの平均年齢は20代後半と若く、婚姻率・出生率も高いことから「出産ラッシュ」が顕在化している。自治体側は住民登録を拒むことができず、結果として妊産婦健診や助産制度、児童手当など各種サービスの受給権が発生する構造である。

1 クルド人妊婦急増と助産現場の悲鳴

埼玉県南部の基幹病院では、2021年度以降クルド人妊婦の受け入れ件数が前年比2倍ペースで増えたとの報告がある。分娩予約の段階で医療費120万円相当のデポジットを求めても支払い能力がなく、入院中に仮放免期限が切れ再収容される事例も発生したと看護主任は嘆く。「支援したいが未収金が膨らみ病院経営を圧迫する」という現場の声は切実である。
ダイヤモンド・オンライン

さらに、医療通訳を手配できないケースでは診療行為が遅れ、母体危険のリスクも増す。医療センターは通訳用タブレットやボランティア通訳者の確保に努めるが、そのコストも膨大である。

2 未収金と自治体財政への影響

川口市立医療センターは、無保険外国人に対し通常の医療費の1.5倍を請求しているが、それでも回収率は3割以下にとどまるという。
日本共産党埼玉県議会議員団

督促・債権回収委託には年間数千万円規模の追加コストが発生し、結局は一般財源で穴埋めされる。人口増に伴う保育所整備や道路補修などの住民サービスへの予算が圧迫され、市議会では「医療センターが公立ゆえに不払いリスクを一手に負うのは不公平」との議論が噴出した。

国費負担の枠組みは限定的で、「外国人患者受入れ医療機関認証」取得病院が対象の補助金では市民病院の赤字を賄えない。市財政課は「医療ツーリズム目的の短期滞在者と在留資格を失った仮放免者を同列に扱う現行ルールは制度疲労を起こしている」と問題を指摘する。

3 「産めば強制送還されない」という誤解

入管法は難民申請中の本国送還を原則停止するが、2023年改正法で三回目以降の申請者や重大犯罪歴のある者は例外とされた。
ヒューライツ大阪

にもかかわらず、コミュニティ内のSNSでは「妊娠中に収容はされない」「子どもが日本国籍なら家族帯同で在留資格変更できる」といった不正確な情報が拡散している。

実際には日本で出生しても父母のどちらも永住者・日本国籍者でなければ子どもは無国籍かトルコ籍となり、在留資格は「特定活動(出生後在留)」に留まる

法務省は出生後60日以内に出国しない場合は退去強制対象となり得ると明示するが、運用は柔軟で、就学期までは仮放免更新が認められる例が少なくない。こうした「人道措置」が在留延長のインセンティブとして機能し、誤解を助長する面がある。

4 子どもを見捨てたのは誰か

クルド人の父母は「祖国では教育環境がなく差別も激しい。だから日本で育てたい」と語る。しかし難民認定率は2024年で1.5%に満たず、トルコ出身者1900人超の申請のうち認定はごくわずかである。

結局、長期的な在留資格を得られないまま就学年齢を迎え、進学・就労が制限される子どもが多数生まれつつある。

こうした状況を招いたのは、トルコ政府のクルド人問題放置である。日本が「見捨てた」と言うよりは、国際社会が難民条約の保護枠組みを十分機能させられていない点が根本だ。

5 差別と区別の違い

医療現場はヒポクラテスの誓いに基づき差別なく治療する。しかし社会保障は「保険料負担と給付」という均衡で成り立つ制度的産物であり、支援対象を合理的基準で「区別」することが必要である。

  • 差別…国籍や民族を理由に給付を拒むこと。
  • 区別…滞在実態や納税実績に応じ、範囲・水準を調整すること。

国民健康保険未加入者が増える背景には、仮放免者が就労制限で保険料を納められない構造がある。救急医療費の公費負担は命を守るセーフティネットとして維持すべきだが、選択的支援をしなければ保険制度全体の支払能力が損なわれ、結果的に医療アクセスが縮小する「逆差別」が起こり得る。

6 見直すべき支援策

国保加入要件の厳格化と保険証確認の徹底
川口市は顔写真付き身分証の提示、オンライン資格確認の導入、保証人複数記載を義務付けるなど未収金対策を強化した。
川口市公式サイト
国も短期滞在ビザ発給要件に医療保険加入を義務化し、地方自治体と情報連携すべきである。

分娩費用の事前デポジット制
無保険者または保険料未納者が出産する場合、出産育児一時金を担保に病院が直接受領できる仕組みを厚労省通知で明確化し、自己負担が生じる分については一定額を前払いさせる。

国・自治体間の費用補填スキーム
法定外繰り入れで赤字を補填する現行の自治体負担は限界に達している。国庫補助率2/3の交付金枠を創設し、未収金に対するセーフティネットを国が引き受けることで都市偏在も緩和できる。

正確な情報発信とコミュニティ支援
入管庁・外務省はトルコ語・クルド語で「出産が在留資格付与の根拠にならない」旨を周知し、コミュニティリーダーと連携した勉強会を実施する。誤情報の拡散経路となるSNSには、行政公式アカウントが介入しファクトチェックを行うことが効果的だ。

難民審査の迅速化と補完的保護資格の活用
仮放免状態が長期化するほど医療・福祉コストは累積する。審査官の増員とオンライン聴取の導入で処理期間を平均2年→1年へ短縮し、認定外でも迫害リスクが客観的に高い個人には「補完的保護」の在留資格を活用する。これにより非認定者の「申請→再申請」ループを断ち切ることができる。

7 歴史的背景とコミュニティ形成

日本におけるクルド系移民の多くは1990年代末から2000年代前半にかけて入国し、埼玉県・東京都北部の繊維業、建設業で就労しながら難民申請を行った。

2000年代は年間のトルコ国籍難民申請が300人前後だったが、2010年代に難民審査の長期化とシリア情勢悪化が重なり申請者が急増した。川口・蕨地域には同郷ネットワークを頼りに親族が連鎖的に集住し、モスク・クルド語学校・食料品店などの「エスニック・エンクレーブ」が形成されたことで、家族呼び寄せと出生増加のサイクルが加速した。

出産ラッシュは2018年から顕著になり、地元保健センターによる2024年母子手帳交付件数は対2017年比で約1.9倍に達している。

8 国際比較から考える医療コストの回収策

米国では、ビザ免除プログラムを利用して出産目的で入国する「バースツーリズム」に対し、医療費滞納があると次回入国拒否措置を取る制度がある。英国はNHSサーチチャージを導入し、滞在6カ月超の外国人に年額624ポンドを追加徴収する一方、難民認定待機者には免除を適用する。

日本も「医療保証金制度」や「保険外ベイビー料」を検討するに当たり、難民申請者と観光客を峻別する基準を国際事例から学ぶべきである。

これらの国際比較を踏まえ、クルド人出産ラッシュが投げかける政策課題は、難民保護と医療財政健全化をいかに両立させるかという普遍的な問いに他ならない。

まとめ

クルド人妊婦の急増は、一義的には人道問題であり、母子の生命を守る視点を欠いてはならない。しかし現状の制度は「未収金→自治体財政圧迫→地域住民サービス低下」という負の連鎖を招き、支援者すら疲弊させている。出生を理由に在留延長を図る誤ったインセンティブを排除し、医療費回収の仕組みと難民審査の迅速化を両輪で進めることが不可欠である。

地方行政は「多文化共生」と「財源制約」という二つの現実のはざまで揺れている。今後、外国人材受入れ拡大や特定技能制度の本格稼働に伴い、出産費用・教育費・生活保護費の負担増は全国各地に波及するだろう。

川口モデルを他都市の反面教師にするのか、あるいは先進的な制度改正のテストベッドに昇華させるのか。国と自治体、そして地域住民と外国人コミュニティの対話こそが、持続的な解決策への第一歩である。

最後に、一人ひとりの出産は祝福されるべき生命の誕生である。その普遍的価値を守るためにも、法制度と財政基盤の持続可能性を確立し、真に守るべき母子への適切な支援が届く社会を構築したい。