2025年、佐賀県伊万里市で発生した母娘強盗殺人事件の容疑者として、ベトナム人技能実習生の男(24)が逮捕されました。彼は正規の在留資格を持つ技能実習生でしたが、事件を通して制度の形骸化と危険性が改めて浮き彫りとなりました。
法務省出入国在留管理庁の統計によれば、令和5年に逃亡した技能実習生は9,788人、そのうち5,552人がベトナム人で、実に全体の約57%を占めています。
不法滞在となった実習生の中には犯罪行為に走る者もおり、制度の維持自体が日本社会の治安リスクとなりつつあります。
技能実習制度の本来の目的と現実の乖離
技能実習制度は、「開発途上国への技術移転」を名目に1993年に導入されました。実習生は日本の企業で3~5年間働き、技能を習得して帰国後に活かすという建前でした。
しかし、現実にはその目的がほとんど果たされていません。大学や専門教育を受けていない若者が大多数で、来日後に行うのは清掃、建設、食品加工、農業、介護、コンビニ勤務などの単純作業がほとんどです。
しかも、実際に帰国して起業や技術指導者になるケースはごくわずかで、多くが日本国内での「低賃金労働者」として使い捨てられているのが実情です。

技能実習生の逃亡が止まらない背景
技能実習生が逃亡する背景にはさまざまな要因がありますが、主な理由は以下の通りです。
- 劣悪な労働環境:長時間労働、休みなし、労災隠し
- 賃金の未払い・搾取:最低賃金以下の待遇、寮費名目で高額天引き
- 自由の制限:携帯電話の使用禁止、外出制限、パスポートの取り上げ
- 仲介業者や管理団体の怠慢:トラブルに対する対応が機能不全
逃亡した実習生の多くは、都市部で高賃金の仕事を探すため、またはブローカーの紹介で非合法な仕事に就くために行方をくらまします。その結果、オーバーステイとなり、法的地位を失ったまま地下社会に紛れ込むのです。

逃亡後に一部は犯罪者に──治安悪化の温床
技能実習生の逃亡は、単なる労働問題にとどまりません。逃亡→不法滞在→違法就労→犯罪加担という構造的な悪循環が存在しています。
近年、報道された事件の一部を紹介します:
- 2023年、群馬県太田市でベトナム人実習生5人が空き巣団として逮捕。被害総額は数百万円に及び、住宅街を中心に十数件の犯行。
- 2022年、愛知県豊田市では、逃亡後のベトナム人が偽造カードで買い物しようとして逮捕。組織的犯行の可能性あり。
- 2021年、兵庫県神戸市で実習生が強盗致傷事件を起こし、被害者は重傷。
また、SNS上では「日本に逃げたら月30万円稼げる」「店を紹介する」など、逃亡や不法就労を煽る投稿が横行しており、これを見た若者が安易に行動を起こしてしまう現状があります。
犯罪に関与する動機の多くは「生活費の確保」や「借金返済」ですが、その背景には来日前に払った**高額な仲介手数料(数十万円〜100万円超)**があるケースが多く、来日直後からすでに「搾取構造」の中に組み込まれているのです。
このような構造を放置すれば、やがて地域住民の不安や不信感が強まり、外国人全体への偏見・差別にもつながりかねません。
根本的な制度見直しが必要
技能実習制度の問題点は一過性ではなく、制度設計そのものに構造的な欠陥があります。以下に主な課題を挙げます。
1. 技術移転という名目の形骸化
もはや「母国への技術移転」は建前にすぎません。実態は、日本の中小企業が安価な労働力を確保する手段として利用されています。
2. 監理団体の監視機能が不十分
実習生の状況を監督するはずの監理団体が、利権化・形骸化しており、実態を把握しない・見て見ぬふりをするケースが多発しています。
3. 送り出し国の責任体制が不明確
ベトナムをはじめとした送り出し国では、民間ブローカーによる高額手数料の搾取や、虚偽情報による勧誘が横行しています。出発前から“負債奴隷”のような構造に陥る若者も少なくありません。
4. 逃亡者への対応が甘い
逃亡しても実際には発見されず、**「逃げ得」**となるケースが多数あります。追跡体制が十分でなく、不法滞在者が再び別の仕事に就けてしまう日本の管理体制の甘さも問題です。
5. 地域コミュニティへの負担
失踪後の技能実習生がゴミ出しのルール無視、夜間騒音、住民トラブルなどを引き起こす事例も増えており、地域との摩擦も深刻です。

育成就労制度への期待と懸念
現在の技能実習制度は2027年をめどに「育成就労制度」へと移行される予定です。新制度では、同一業種内での転職が可能となるほか、労働環境の改善も図られるとされています。
しかし、転職の自由化により、
- 都市部への就労者集中
- 地方中小企業の人材流出
- 逃亡のさらなる誘発
といった副作用も予測されています。現場からは「いまよりもっと人が集まらなくなる」という不安の声も上がっています。
また、監理団体の役割や制度の運用方法が曖昧なままで進めば、従来の問題がそのまま温存される恐れもあります。
もはや制度廃止も視野に入れるべき時期
ベトナム人技能実習生の逃亡が年間5500人を超える現状は、制度の破綻を明確に示しています。
日本の将来を考えるなら、「とりあえず来てもらう」「安く働いてくれればいい」という外国人政策を根本から見直す必要があります。
今後は、単純労働ではなく、日本の文化・法制度・言語に適応できる高度人材を段階的に受け入れる仕組みへと転換すべきです。そして、不法滞在者や逃亡者に対しては、より厳格な取り締まりと早期送還を徹底しなければなりません。
技能実習制度の廃止と抜本的な外国人労働政策の見直し。
それこそが、日本の安全と尊厳を守るための第一歩なのです。




