埼玉・野菜加工場で起きた「技人国」外国人不適正就労事件 社長ら逮捕の背景と問題点

外国人問題

高度人材向けの在留資格である「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の外国人を、資格外の業務である野菜加工現場で働かせたとして、警視庁国際犯罪対策課は13日、埼玉県深谷市の野菜加工・販売会社「ベジミール」社長の石井誠(48)ら2名を入管法違反(不法就労助長)容疑で逮捕しました。
工場ではインド国籍の男性らが低温環境の中で夜間作業に従事していたとみられています。

日本の外国人雇用は、在留資格の種類によって働ける内容が厳密に区分されています。今回の事件は、その原則から大きく逸脱していた可能性が高く、「技人国」という高度人材ビザの本来の目的を損なう重大なケースと言えます。

以下では、この事件の背景、技人国制度の基本、そしてなぜ問題となるのかを初心者にも分かりやすく解説し、さらに実務で役立つQ&Aを充実させてまとめます。


■ 技人国在留資格とは

技術・人文知識・国際業務(通称「技人国」)は、外国人が専門的な知識・技能を活かして日本で働くための在留資格です。
対象となる代表的な職種には次のようなものがあります。

  • 機械・ITの技術者
  • 経営企画・マーケティング・営業
  • 翻訳・通訳
  • デザイン・国際業務全般

つまり、「専門性を要するホワイトカラー業務」が中心です。
そのため、工場や現場作業、レジ打ち、倉庫作業などの単純作業は原則認められていません。

これは制度の根幹であり、法務省が明確に示している基準です。


■ なぜ野菜加工場での勤務が問題なのか

報道にある野菜のカット、仕分け、箱詰めといった作業は、専門性を必要としない「単純労働」に該当します。
技人国資格の外国人にこうした業務をさせることは、次の理由から違法となります。

● ① 在留資格の目的との不一致

技人国は「高度で専門的な労働力の確保」を目的としており、人手不足の現場作業を補うための資格ではありません。

● ② 単純労働の禁止

入管法上、技人国は「専門性を必要とする業務」のみに従事可能であり、単純作業は対象外です。

● ③ 企業側が処罰の対象(不法就労助長罪)

在留資格外の活動をさせた場合、雇用主は「不法就労助長罪」(入管法73条の2)の対象となります。
知らなかったでは済まされず、在留カード確認や業務内容の管理を怠った企業にも責任があります。

今後、企業名の公表や取引停止、行政指導などのリスクも生じます。

■ 不法就労助長罪(入管法73条の2)とは?

不法就労助長罪とは、外国人に不法就労をさせたり、不法就労を手助けしたりする行為を処罰する法律です。
「働いてはいけない在留資格の外国人を働かせる」「在留期限が切れた外国人を雇う」「虚偽の在留資格で働いていると知りながら黙認する」などが典型的な例です。

● どんな行為が罪に当たるのか?

入管法73条の2では、以下のような行為が処罰対象とされています。

  1. 不法就労活動をさせる行為
     例:資格外の単純労働をさせる、留学生をフルタイムで働かせる等。
  2. 不法就労活動を助長する行為
     例:ブローカーとして不法就労者を紹介する、偽装雇用を斡旋する。
  3. 事業活動により不法就労を受け入れる行為
     例:企業が「実質的に違法と知りながら雇う」ケース。

● 罰則は?

3年以下の懲役または300万円以下の罰金、またはその併科
(出典:出入国管理及び難民認定法73条の2)

企業や事業主はもちろん、「知っていて関与した」担当者も刑事責任を問われる可能性があります。

● なぜ厳しく取り締まられるのか?

不法就労は、以下のような問題につながるため、国が最も警戒する違反の一つです。

  • 外国人本人の搾取や劣悪労働へのつながり
  • 資格制度・ビザ制度の信頼失墜
  • 適法に雇用する企業との不公平
  • 偽装雇用や人身取引の温床

今回のように、「技人国」のインド人を野菜工場で働かせる行為は、典型的な『資格外活動による不法就労』であり、企業側がそれを認識していた場合、まさに不法就労助長罪の対象になるのです。


■ さらに詳しく理解するための充実Q&A(10問)

Q
なぜ技人国の外国人は野菜加工場で働けないのですか?
A

技人国は「専門性のある業務」が前提だからです。野菜のカットや仕分けは単純作業とされ、技人国の資格範囲に含まれません。

Q
会社が「短期間だけ」「応援として」と言い訳すれば許されますか?
A

一切許されません。
1回でも、短時間でも「資格外活動」に該当します。「応援」「手伝い」という形でもアウトです。

Q
業務の一部が技人国の範囲なら、残りの部分を単純作業にしても問題ない?
A

これも違法です。
入管庁は「業務の主要部分」が専門的業務である必要があると明言しています。仕事の3割が専門業務、7割が単純作業といったケースは認められません。

Q
今回のようなケースでは、外国人本人も罰せられるのですか?
A

はい。
外国人側も「資格外活動違反」となり、最悪の場合は在留資格取消しや退去強制の対象になります。

Q
野菜加工場で外国人を働かせたい場合、どの在留資格を使うべき?
A

単純作業が中心なら
特定技能(1号)
技能実習
家族滞在 等
といった別枠を活用する必要があります。
技人国は絶対に使えません。

Q
⑥技人国の範囲が曖昧なときはどうすれば良い?
A

行政書士や専門家に相談し、事前に「業務内容の適合性」をチェックすべきです。
曖昧なまま雇用すると、今回のような重大なリスクが発生します。

Q
会社に悪意がなければ刑事罰を避けられますか?
A

避けられません。
在留カードの確認不足や契約書の不備など「注意義務違反」があれば、企業は処罰されます。


■ まとめ

今回の埼玉の事件は、外国人雇用における「在留資格と業務内容の不一致」がどれほど重大な問題を引き起こすかを示す典型例です。
技人国はあくまで専門的な業務のための在留資格であり、単純作業への転用は違法です。
企業側のリスクは逮捕、罰金、信用失墜など極めて大きく、外国人本人にも処分が及びます。

外国人雇用においては、

  • 在留資格の確認
  • 業務内容の適合性
  • 契約内容
  • 労働条件
    を常に適切に管理する必要があります。

高まる外国人労働力への需要の中で、企業側がルールを守る姿勢を徹底しなければ、同様の事件は今後も繰り返される可能性があります。