2024年12月23日、東京バス株式会社は、特定技能制度を活用し、フィリピン国籍の外国人4名を路線バス運転手として配属し、東京および沖縄で運行を開始しました。
外国人が日本の路線バスを実際に運行するのは、全国で初めての事例とされています。
報道によると、運転手の一人であるルアレス氏は、福島県で大型二種免許を取得し、日本語能力試験(JLPT)N2レベルを取得済みです。運行開始当初は、日本人運転手が同乗し、サポートを受けながら業務を行う体制が取られています。
一方で、このニュースはSNS上で大きな議論を呼びました。X(旧Twitter)では、インフルエンサーであるへずまりゅう氏の投稿が5,500以上の「いいね」を集め、
・在留外国人が過去最多の約395万人
・日本人の出生数が過去最少の約67万人
という統計を示しながら、移民政策そのものへの反対を訴えています。
本記事では、感情論に流されるのではなく、行政書士という専門的立場から、制度面の問題点を整理します。
なぜこれほど反対意見が出るのか
① 路線バスという「公共性の高さ」
路線バスは、単なる運転業務ではありません。
通勤・通学、高齢者の生活の足として、地域インフラの中核を担う公共交通です。
万が一の事故は、被害者の人生を大きく変えます。そのため日本では、
・厳格な免許制度
・長年の安全教育
・細かな接客マニュアル
が積み重ねられてきました。
この分野に外国人労働者を入れることに、国民が慎重になるのは自然な反応だと言えます。
② 日本語能力と「想定外」の対応力
JLPT N2は、日常会話や業務上のやり取りがある程度できる水準です。
しかし、路線バス運転手には、
・急病人が出た場合
・事故やトラブル発生時
・高齢者や障害者への即時対応
といった、マニュアル通りにいかない判断が常に求められます。
日本語が「分かる」ことと、「瞬時に適切な判断ができる」ことは別問題です。この点に不安を感じる人が多いのも無理はありません。
③ 事故が起きた場合の責任問題
法律上、外国人であっても日本人と同様に責任を負います。
しかし実務上は、
・在留期間満了後に帰国
・転職や失踪
といったリスクが、日本人より高いのも事実です。
被害者側から見たとき、十分な補償や責任追及が本当に可能なのかという不安は残ります。

よくあるQ&A(5つ)
- Q外国人が路線バスを運転するのは違法ではないのですか?
- A
違法ではありません。
一定の条件を満たし、「特定技能(自動車運送業)」の在留資格を取得すれば可能です。
- Q日本語能力は制度上どの程度求められますか?
- A
目安はJLPT N3~N2相当とされています。
ただし、実務ではN1レベルに近い能力が求められる場面が多いのが現実です。
- Q日本人運転手の仕事は奪われませんか?
- A
短期的には奪われにくいですが、
長期的には「賃金を上げずに外国人で補う構造」が固定化する恐れがあります。
- Q今後、全国に広がる可能性はありますか?
- A
国が制度を整備している以上、他社・他地域に広がる可能性は高いと考えられます。
- Q行政書士として最も懸念している点は?
- A
制度導入のスピードに対し、安全性や社会的影響の検証が追いついていない点です。
実務をしていて感じること|制度と現場の深刻な乖離
行政書士として外国人の在留資格申請や雇用相談に日々携わっていると、制度設計と現場の実態に大きな乖離があることを強く感じます。
まず、日本語能力についてです。
実務の感覚として、日本語能力が乏しい外国人は非常に多いというのが正直な印象です。日本語能力試験N1を取得している場合であっても、それはあくまで「試験で点数を取れる」という意味に過ぎません。実際の職場では、
・指示の微妙なニュアンスが伝わらない
・想定外の質問に対応できない
・咄嗟の会話になると言葉が出てこない
といったケースが少なくありません。
特に路線バス運転のように、瞬時の判断や高度なコミュニケーションが求められる業務では、試験上の日本語能力と実務上の会話力が比例しない現実は、軽視できない問題です。
また、もう一つの大きな課題が国籍の偏りです。
受入れ人数に国籍別の上限を設けなければ、結果として、中国、ベトナム、ネパールなど特定の国籍に極端に偏ることになります。これは既に技能実習制度や特定技能制度の現場で起きている事実です。
国籍が偏ることで、
・職場内で日本語が使われにくくなる
・日本社会への適応が進まない
・地域コミュニティとの摩擦が生じる
といった問題が連鎖的に発生します。
外国人労働者を受け入れること自体が問題なのではありません。
しかし、日本語能力の実態や国籍バランスを無視した制度運用は、長期的に見て必ず歪みを生むという点は、実務をしている立場から強く指摘しておく必要があります。

ビザ(在留資格)の問題点を専門的立場から
今回活用されている特定技能制度は、「深刻な人手不足分野」において、即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。
しかし、路線バス運転は、
・公共性が極めて高い
・人命に直結する
・高度な判断力が必要
という点で、他の特定技能分野と同列に扱うべきではありません。
また、特定技能には、
・在留期間に上限がある
・原則として家族帯同ができない
という特徴があります。
これは、長期的に地域に根付く人材育成には向かない制度であることを意味します。
結果として、「人が足りなくなれば、また別の外国人を入れる」という循環に陥る可能性があります。
(根拠:出入国管理及び難民認定法、特定技能制度/出入国在留管理庁)
まとめ
外国人運転手による路線バス運行は、
人手不足という現実的な問題への一つの対策ではあります。
しかし、
・安全性
・責任の所在
・日本語能力
・制度の持続可能性
を総合的に考えると、拙速な拡大には強い懸念が残ります。
行政書士として重要だと考えるのは、
「合法か違法か」ではなく、
その制度が日本社会にとって本当に健全かどうかという視点です。
今後、同様の事例が増えるからこそ、国・企業・国民が冷静に議論し、慎重に制度設計を見直していく必要があるでしょう。




