近年、我が国における在留外国人の数は増加傾向にあり、これに伴い在留手続きの行政運営にも新たな対応が求められている。こうした状況を受けて、政府は来年度中に在留手続きに関する手数料を大幅に引き上げ、欧米諸国並みの水準にする方針を固めたことが20日、関係者への取材で判明した。
具体的には、在留資格の変更や1年以上の期間更新申請について、現行の6,000円程度から3万円〜4万円へ、また永住許可申請については現行1万円程度から10万円以上とする方向で検討が進んでいるという。
本稿では、手数料引き上げの背景・各国の水準・見通し・そしてこの改正に「メリットしかない」理由を整理したうえで、行政書士としての実務的な視点も交えて解説する。
1.引き上げの背景
まず、なぜこのタイミングで手数料の大幅引き上げが検討されているのか、その背景から確認する。
(1) 在留外国人数の増加
日本における在留外国人数は増え続けており、在留手続き・審査の件数も着実に上昇している。この増加は、少子高齢化や労働力不足、グローバル化の進展とも連動している。また制度対応や管理コストもこれまでより高くなっている。
こうした状況を前提に、手続きを担う行政コストを適切に反映させる必要性が高まっている。実際、手続きの迅速化・窓口・オンライン化・審査体制の強化など、運営体制をアップデートするための予算確保が必須となっている。
(2) 現行の手数料水準の「安さ」
報道によれば、現行の手数料水準(例:6,000円、1万円程度)では、諸外国と比して極端に低く「今までが安すぎた」とみなされている。
たとえば、欧米諸国では在留更新や永住許可などで数十万円に近い手数料が課されているケースもあり、日本だけ手続きコスト・制度運営コストを公的な手数料で十分に賄えていないという指摘がある。
(3) 欧米並みに水準を引き上げる狙い
政府としては、手数料を欧米並みに引き上げることで「在留制度の信頼性・整合性」を確保し、在留外国人との共生施策や制度運営改善に必要な財源を確保する方針である。
また、手数料の引き上げは、在留管理を適切に行うための抑止的作用も併せて狙える。多数の手続き案件がある中で、管理を粗く行うわけにはいないという認識が制度設計側にもある。

2.各国の手数料水準と比較
今回の改正案が「欧米並み」を掲げているが、具体的にどの程度の水準か、参考となる各国の手数料水準を簡単に確認しておこう。
(1) 日本の現行水準と改正案
- 現行:在留資格変更・更新(1年以上)で約6,000円。
- 永住許可申請:約1万円。
- 改正案:在留資格変更・1年以上の更新で3〜4万円程度、永住許可で10万円超。
(2) 海外の例(参考)
厳密な比較データは国ごとに異なるが、欧米で在留関連の手数料が数十万円相当となる国も少なくない。日本が改正により「数万円」から「数十万円」級に近づくことで、制度運営に見合った手数料体系へ向けた転換と見ることができる。
例えば、英国・米国・カナダなどでは「永住許可(永住権)申請」の際に高めの手数料が課されるケースが多く、「申請料=制度利用者の自己負担も含めた運営コスト」になる設計である。日本もこの流れを追う形となる。
3.改正案の見通しと注意点
手数料引き上げの方向性が報じられてはいるものの、現時点では制度改正の確定事項ではなく「検討段階」である。報道では「来年度中」に実施を目指す方針とのみ記されている。
以下に、実務的な観点から留意点を整理する。
(1) 実施時期と移行措置
改正がいつ制度に反映されるか――「来年度中」という見通しだが、法令改正・省令改正・告示変更など手続きは複数段階を要する。申請を控えている方・企業にとっては、旧料金での申請可能期間が設定される可能性もある。
実務的には、申請準備を早め、「旧料金適用の期限」が設けられるかどうかの確認が重要である。
(2) 対象となる手続きの範囲
報道によれば対象は「在留資格変更」「1年以上の期間更新」「永住許可申請」など。だが、他の手続き(例えば再入国許可、資格外活動許可、短期更新など)が引き上げ対象となるかどうかは明示されていない。
行政書士としては、対象範囲・料金額・申請書類の変更の有無・オンライン申請対応の変化などを逐次確認していく必要がある。
(3) 企業・個人双方への影響
手数料引き上げは個人の負担増に直結するが、特に企業が複数の外国人材を雇用・管理している場合には全体コストの上昇につながる。
また、個人では在留期間の更新・変更を控えている場合、申請タイミングの見直し/準備の早期化が望ましい。
さらに、手数料が高くなることで「申請をするかどうか」の検討段階でコスト意識が高まり、「申請確実性」「書類品質」がより重視されるようになるだろう。行政書士のサポートが以前にも増して重要となる。
4.なぜ「メリットしかない」のか
タイトルでは「メリットしかない」としたが、ここではその理由を整理する。
(1) 制度運営の安定化
手数料を適切に引き上げることで、申請手続き・審査・在留管理に必要な運営コストを制度側が確保できる。これにより、審査の迅速化・オンライン化・人員配置・監視体制の強化などが期待でき、結果的に制度利用者(外国人・企業双方)にとっても手続きの信頼性が高まる。
(2) 不法就労・不正在留の抑止
運営コストが適切に賄われることで、審査・監視能力を向上させる余地が生まれる。これが制度への信頼や「適正な在留」促進につながる。制度利用の側から見れば、「手続きして正しく在留している」という評価を受けやすくなるという意味ではメリットと言える。
(3) 本当に必要な人・企業に対する質の高いサービス提供
手数料が引き上げらるということは、申請を行う側も「準備をきちんとする」「必要な条件を満たす」というモチベーションになる。これは、制度の利用者が適正に手続きを行いやすくなる環境整備に資する。
また、行政書士として支援する立場からも、手続きの質が問われる時代であり、サービス提供側としても付加価値を高めやすい。
(4) 企業にとってのメリット
手数料引き上げは企業にとってコスト増にはなるが、その分制度が安定・整備されることで、外国人材を受け入れる環境が整備されやすくなる。雇用側としては、手続きの遅延・不備・リスク低減という点でメリットがある。
また、制度が整備されるというメッセージは、企業にとって「外国人材受け入れが安心してできる」という環境整備が進むことを意味する。

5.実務的なアドバイス(行政書士視点)
行政書士として、顧客(個人・企業)に対してぜひお伝えしたいポイントを以下に整理する。
- 申請タイミングの見直し
改正実施前に旧料金での申請が可能かどうか、早めに確認する。手続きが集中する可能性もあるため、早期申請を推奨する。 - 費用の事前見積もり
引き上げ額が大きいため、企業は複数名の外国人を支援する場合、総額費用を前もって見積もっておくべき。個人でも「更新・変更・永住」など、今後の手続きシナリオを考慮して予算を確保する。 - 書類・条件の適合性チェック強化
手数料が高くなる分、申請ミスや補正対応による再申請のコストも相対的に痛みを伴う。書類の充実、条件の確認、事前相談を徹底する。 - 制度変更内容のフォローアップ
法令・省令・告示が改正された際、手続き対象・金額・申請方法(オンライン可否)など細部が決まるため、最新情報を逐次キャッチする。顧客への情報提供準備をしておく。 - 受け入れ体制・事後管理の説明
外国人材を受け入れる企業には、手続きだけでなく、入国後・在留中のフォロー(在留カード管理、雇用契約の確認、適正就労管理等)をサービスとして提供する価値が高まる。手数料引き上げを機に、付加サービスを整備することが望ましい。
6.まとめ
本稿では、政府が来年度中に予定している在留手続き手数料の大幅引き上げについて、背景・比較・見通し・メリット・実務アドバイスという構成で整理した。
- 在留外国人の増加・制度運営の負荷増に伴い、手数料を「欧米並み水準」に引き上げる方針が固まりつつある。
- 現行の6,000円/1万円程度という水準から、3〜4万円・10万円超という新水準を視野にしており、制度運営の安定化に繋がる。
- この改正は、利用者側・制度運営側・受入企業側すべてにおいて「メリットしかない」と言っても過言ではない。制度の信頼性向上、サービスの質向上、手続き環境の整備という好循環が期待できる。
- 行政書士としては、申請タイミングの戦略・費用の見積もり・書類チェック・制度改正内容の追跡・受入体制の説明という点で付加価値を提供するべきである。
今後、法令改正・省令告示・実施期日が確定された際には、顧客向けに「改正版チェックリスト」や「費用変更シミュレーション」などを提供すると差別化につながる。
制度の変化をチャンスと捉え、サービス内容・提供価値を高めていくことが、行政書士の今後の在留関連ビジネスにおいて重要となる。
ぜひ、本改正を機に「手続きコストが上がるから大変」ではなく、「制度が整備されるから安心・信頼できる」という視点でお客様に情報提供されることをおすすめする。




