2026年3月10日、政府は出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)の改正案を閣議決定しました。
今回の改正では、外国人の入国・在留管理を強化するための新しい制度が盛り込まれています。中でも注目されているのが、在留資格に関する手数料の大幅引き上げです。
現在、在留資格の更新や変更の手数料は数千円程度ですが、改正案では最大10万円まで引き上げられる可能性があります。さらに、永住許可の手数料は最大30万円になるとされています。
本記事では、今回の入管法改正のポイントを整理しながら、特に「手数料の引き上げ」に焦点を当てて解説します。
入管法改正の概要
今回の改正案にはいくつかの変更が含まれていますが、その中でも大きな柱の一つがJESTA(電子渡航認証制度)の創設です。
JESTAとは、短期滞在ビザが免除されている外国人に対し、入国前にオンラインで滞在目的などを申告させる制度です。申請された情報を事前に審査することで、不法滞在を目的とする外国人の入国を防ぐことが狙いとされています。
この制度は、アメリカのESTAなどを参考にした仕組みであり、日本でも2028年度中の導入を目指して準備が進められています。
もっとも、今回の改正で実務上大きな影響が出る可能性があるのは、在留資格に関する手数料の引き上げです。

在留資格の手数料が大幅に引き上げへ
現行制度では、在留資格に関する手数料の上限は1万円とされています。しかし今回の改正案では、この上限が大きく見直されることになりました。
改正案では次のような上限が示されています。
| 手続き | 現在 | 改正後(上限) |
|---|---|---|
| 在留資格更新 | 6,000円 | 最大10万円 |
| 在留資格変更 | 6,000円 | 最大10万円 |
| 永住許可 | 8,000円 | 最大30万円 |
現時点では「上限」が定められる段階であり、実際の金額は今後政令などで決定される予定です。しかし、仮に上限に近い水準が設定された場合、これまでと比べて大幅な値上げになる可能性があります。
在留資格の更新は多くの外国人が定期的に行う手続きです。そのため、この改正は外国人本人だけでなく、外国人を雇用する企業にも影響が及ぶことになります。
なぜ手数料を引き上げるのか
今回の手数料引き上げの背景には、外国人の増加があります。
近年、日本で働く外国人は急増しています。厚生労働省の統計によれば、外国人労働者は200万人を超え、過去最多を更新し続けています。外国人の増加に伴い、入管における審査業務も年々増加しています。
在留資格の審査は、単に書類を確認するだけではありません。雇用条件や業務内容の確認、学歴の確認、在留状況の確認など、さまざまな要素を総合的に判断する必要があります。そのため、審査には一定の行政コストがかかります。
現在の手数料は、更新や変更で約6,000円と非常に低い水準です。この金額では行政コストを十分にカバーできていないという指摘が以前からありました。今回の改正は、こうした状況を踏まえ、行政コストの一部を手数料で賄うという考え方が背景にあると考えられます。
手数料引き上げによるデメリット
もっとも、手数料の大幅な引き上げには懸念もあります。
まず考えられるのは、外国人本人の負担増です。留学生や若い労働者にとって、数万円から十万円単位の手数料は決して小さな金額ではありません。場合によっては、在留資格の更新費用が大きな経済的負担になる可能性があります。
また、外国人を雇用する企業への影響も考えられます。実務上、ビザの手続き費用を会社が負担するケースも少なくありません。手数料が大幅に上がれば、外国人採用のコストが上昇することになり、特に中小企業にとっては負担が増える可能性があります。
さらに、手数料が高くなりすぎた場合、「更新を諦めてしまう」外国人が出る可能性も指摘されています。制度設計を誤ると、不法滞在の増加という逆効果を生むリスクもゼロではありません。

手数料引き上げのメリット
一方で、手数料の見直しには一定のメリットもあります。
現在の制度では、比較的低い費用で申請ができるため、内容が十分に整理されていない申請や、とりあえず提出してみるという申請も一定数存在します。手数料が適正な水準に引き上げられれば、こうした申請は減少する可能性があります。
また、手数料収入が増えれば、審査体制の強化につながる可能性もあります。入管の審査官の増員やシステム整備が進めば、審査の質やスピードが改善されることも期待できます。
外国人の受け入れが拡大する中で、在留管理を適切に行うためには、一定の行政コストが必要です。その意味では、手数料の見直しには一定の合理性があると言えるでしょう。
行政書士として感じる現場の実情
実務の現場では、在留資格の申請についてさまざまなケースを目にします。
中には、条件を満たしているかどうか微妙なまま提出される申請や、業務内容が十分に整理されていない申請もあります。現在の手数料は数千円程度であるため、申請自体のハードルはかなり低いと言えます。
もちろん、外国人の負担が大きくなりすぎることは望ましくありません。しかし、適正な審査を維持するためには、ある程度のコスト負担が必要であるという側面もあります。
まとめ 手数料引き上げは一定の合理性がある
今回、政府が閣議決定した入管法改正案では、外国人の入国・在留管理に関して大きな制度変更が予定されています。その中でも特に注目されているのが、在留資格に関する手数料の大幅な引き上げです。
現在、在留資格の更新や変更の手数料はおおむね6,000円程度、永住許可でも8,000円という比較的低い金額に設定されています。しかし改正案では、これらの手数料の上限が見直され、更新・変更は最大10万円、永住許可は最大30万円まで引き上げられる可能性があります。最終的な金額は今後の政令などで決定される予定ですが、もし上限に近い水準で設定されれば、これまでとは大きく異なる制度になると言えるでしょう。
この背景には、日本で働く外国人の増加があります。外国人労働者は年々増えており、それに伴って入管の審査業務も大きく増加しています。在留資格の審査は単なる書類確認ではなく、雇用条件や業務内容、学歴、在留状況などを総合的に確認する必要があるため、一定の行政コストがかかります。現在の手数料はそのコストと比較すると非常に低い水準とされており、今回の改正はその見直しという意味合いもあると考えられます。
もっとも、手数料の引き上げには課題もあります。外国人本人の経済的負担が増えることに加え、企業がビザ関連費用を負担している場合には、外国人採用のコストが上昇する可能性もあります。特に中小企業にとっては影響が小さくないかもしれません。また、制度設計によっては、更新手続きを避ける外国人が増えるなど、望ましくない影響が生じる可能性も指摘されています。
| 手続き | 改正後の上限 |
|---|---|
| 在留資格更新・変更 | 最大10万円 |
| 永住許可 | 最大30万円 |
一方で、手数料を適正な水準に引き上げることで、審査体制の強化や行政サービスの改善につながる可能性もあります。外国人の受け入れが拡大していく中で、在留管理を適切に行うためには、一定のコスト負担が必要であるという考え方も理解できるところです。
今後、実際にどの程度の手数料が設定されるのか、また制度がどのように運用されるのかによって、外国人本人や企業への影響は大きく変わってきます。今回の入管法改正は、日本の外国人政策にも関わる重要な制度変更であり、今後の動向を注意深く見ていく必要があるでしょう。




